回遊式庭園という形式とその楽しみ方
回遊式庭園は、室町時代から江戸時代にかけてつくられた日本庭園の形式です。多くは、中央に池があり、その周囲に小庭が並ぶ構成になっています。園内を歩いてみると、視界に新しい小庭が次々と現れ、やがてテーマがあることに気づくはずです。
回遊式庭園は、東海道五十三次(熊本・水前寺成趣園)や、和歌山の名所である和歌の浦八十八境(東京・六義園)といった全国の景勝を模しているのです。
小庭には、富士山や三保の松原、箱根の関所といった名所旧跡がそれぞれ配置されています。その一景一景を経由することで、全体を貫くテーマが見えてくるという趣向です。いわば絵巻物を庭園化したものであり、紙芝居の構成にも似ています。これは、座敷に座って眺める従来の庭とはまったく異なるものです。
歩き、巡ることで、旅をしているかのような楽しみ方ができる。これが回遊の「回」のゆえんです。
回遊式庭園を鑑賞するには、知識と教養も必要です。池辺に横たわる立派な松を「きれいだな」とほめるだけでは解したことにはなりません。
池を海に見立て、万葉集の「庵原の清見の崎の三保の浦ゆゆたけき見つつもの思ひもなし」という和歌や、能舞台にもなっている「羽衣」の伝説を思い起こす。そうした教養を楽しむのが回遊の「遊」のゆえんなのです。
浄土式庭園(平等院など)も歩く庭ですが、信仰目的なので、回遊式庭園とは呼びません。江戸期の庶民は、七福神や三十三ヶ所観音巡りをレジャーのように楽しんでいました。回遊式庭園はそうした文化がうんだ庭なのです。
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「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
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只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2022.10.09