主役は庭ではない、外の景色が主人公
借景とは字のとおり、外部の景観を借りて庭をつくる造園法です。本来、外の景色は庭を演出する引き立て役のはずですが、そちらが主役になって、庭の方が脇役になってしまうことがあります。
たとえば富士山を借景に取り入れたら、その庭の主人公は富士山に移ってしまうでしょう。実は、この逆転を楽しむのが借景の庭を見る基本なのです。
京都の借景には比叡山がよく登場します。関東における富士山と同じように、なだらかに広がる裾野の形が好まれたからでしょう。代表的なのが正伝寺と円通寺の庭です。おもしろいのは、どちらも同じ比叡山を借景にしているのに、その見せ方が正反対なところです。
正伝寺は引き離して山を遠くに見せている借景です。枯山水の白い砂地に、サツキの刈り込み越しに比叡山が見えます。灰色の石よりも、ふっくらとしたサツキの方が大きく見え、その分、比叡山は小さく、遠くにあるように見えるのです。
一方、円通寺の庭は近づけて大きく見せようとしています。石は立てずに低く伏せて置かれており、添えられた灌木も低く刈り込まれているのがわかるでしょう。
このように低く仕掛けることで、比叡山を大きく見せる効果が発揮されるのです。低く横にたなびく石の流れも、比叡山の特徴である裾野の広がりを引き立てています。コントラストの妙といえるでしょう。
このように、主役の借景をどう見せるかは脇役としての庭のつくり方で決まります。富士山や比叡山ではなく、こうした脇役に注意を向けると、新しい発見に出会えるはずです。
『建築の話』はこんな人におすすめ!
・世界中の様々な建築に興味がある!
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以上の方には「図解 建築の話」は大変おすすめな本です。
「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
あなたの好奇心をくすぐる建築のトリビアが満載です
只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
身近な建物が楽しくなる。ナゾとギモンを一挙解決!屋根の形は、どうやって決まるの? 正面だけが西洋風の看板建築って、どんな構造? うだつが上がらないの、うだつって何? 日本の建築をテーマに、さまざまな建築のナゾを楽しく解き明かします。古民家から、お寺、神社、城、庭、代表的な近・現代建築まで、建築家ならではの視点で、建築物の見方、楽しみ方を図解します。理系の知識がなくても大丈夫。私たちの生活や伝統美など、暮らしの文化に根ざした日本建築のスゴさと面白さがわかります。建築士しか書けない精緻なイラストを満載。60項目で楽しむ建築エンターテインメント本です。
公開日:2022.10.10