砂を読み石を想うのが枯山水の庭
枯山水とは、水をつかわず、石と砂、少々の苔や灌木で山水の風景を表現した庭です。室町時代に発展した禅宗の影響が強く、禅の悟りを庭で表しているともいわれます。あまりにも抽象的な表現なので、とまどう人も多いかもしれません。しかし素直な気持ちで見れば、その豊かな世界を楽しめるようになります。
まず砂に注目してみましょう。ほうきで付けられた砂紋(箒目)が直線に近いなら、水面の穏やかな沼や池です。うねりがあれば川、うねりが大きければ海、半円を並べた砂柄(青海波は)は荒海だと考えられます。
次は石です。沼地を表現しているとき、石は伏せたように置かれます。大海では、島に見立てるための大きな石が横たえているでしょう。川に立ち上る石組みは滝です。もし尖った石を組み合わせていたら、荒海の荒磯を表しています。
以上が、枯山水の庭における砂と石の原則です。これを押さえたうえで、改めて庭全体を見てください。ひときわ目立つ背の高い石が主石と呼ばれる、水の始点です。
そこから砂紋に沿って目を移せば、上流から下流へ、ときに淀みをつくりながら、入江を経て大海に至る川のストーリーを想像できるでしょう。石も、上流にはゴツゴツした大きなものがあり、下流は丸みを帯びたもの、海には荒磯に立ち向かう頑強な石組みがあることもわかるはずです。
枯山水の庭を、人生に置きかえて鑑賞する人もいます。大きな水紋に悟りを見たり、青海波を人生の試練ととらえるなど、解釈はさまざま。抽象的だからこそ、自分なりに思索を巡らせる余地が多いのも、枯山水の魅力です。
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「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
あなたの好奇心をくすぐる建築のトリビアが満載です
只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
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【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
身近な建物が楽しくなる。ナゾとギモンを一挙解決!屋根の形は、どうやって決まるの? 正面だけが西洋風の看板建築って、どんな構造? うだつが上がらないの、うだつって何? 日本の建築をテーマに、さまざまな建築のナゾを楽しく解き明かします。古民家から、お寺、神社、城、庭、代表的な近・現代建築まで、建築家ならではの視点で、建築物の見方、楽しみ方を図解します。理系の知識がなくても大丈夫。私たちの生活や伝統美など、暮らしの文化に根ざした日本建築のスゴさと面白さがわかります。建築士しか書けない精緻なイラストを満載。60項目で楽しむ建築エンターテインメント本です。
公開日:2022.10.17