進化は個体ではなく、集団のなかで起こる
「進化した」という言葉は、日常さまざまな場面で使われています。
製品の性能や人の能力が大きく向上するという意味で用いられたり、ときには「進化を目指す」という表現が使われることもあります。
しかし、本来、「進化」とは「生物進化」を指す言葉であり、これらとは別物です。
たとえば、中生代三畳紀のある爬虫類のオスとメスに生まれた子どものなかに、骨盤に穴が空いた子がいたとしましょう。足の骨の付きかたが変わったことで速く動けたので、多くの子孫を残します。
その子のなかに同じ特徴を受け継ぐ子がいれば、同じように子孫が増え、何世代も経ていくうちに、骨盤に穴があるという特徴をもつ種が多数派になり、結果として、恐竜の祖先となる—。これが生物の進化です。
つまり、進化は個体に起こるのではなく、集団で起こる変化だといえます。
また、進化には非常に長い時間が必要です。 同じ種の生物であっても、個体にはそれぞれ少しずつ違いがあるものです。
その小さな違いが置かれた環境で有利に働けば、その特徴を受け継ぐものが増え、何世代も経るうちに大きな違いとなり、新しい種へと進化したことがわかります。これが進化による適応(生物の体が生活や環境の変化にともなってさまざまに変化すること)です。
この積み重ねによる試行錯誤が生物の進化の歴史であり「みんなが少しずつ違うこと」「それぞれに特徴があること」が、進化の原動力になってきたといえるでしょう。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。
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公開日:2022.11.11