古生代最後の地上に君臨した最大の頂上生物
イノストランケヴィアは、古生代ペルム紀後期の覇者として知られる生物です。
全長3.5メートル以上、頭だけで約60センチの巨体でありながら、すばやく動くことができました。まるで剣のような鋭い犬歯は13センチ以上。分厚い装甲でおおわれた大型動物も貫き、捕食していました。当時繁栄していた肉食のゴルゴノプス類のなかでも最大の存在だったと考えられています。
ゴルゴノブス類は大きくアゴを開けることができ、巨大な犬歯で獲物の肉を引き裂くなどして捕食していたと考えられています。
イノストランケヴィアの属するゴルゴノプス類は、有羊膜類のなかから登場した単弓(たんきゅう)類と呼ばれるグループがさらに分かれた獣弓(じゅうきゅう)類に分類される生物です。
単弓類は、頭蓋骨(ずがいこつ)のこめかみ部分にある穴(側頭窓)の下側にある弓の形をしている骨がひとつあることから、この名前で呼ばれます。
石炭紀後期に出現し、ペルム紀にはそこから獣弓類が登場します。この獣弓類から、やがて、わたしたち人類へとつながる哺乳類の祖先が生まれることになります。
イノストランケヴィアなどの獣弓類をはじめとする単弓類の生物たちは、まだひとつだった巨大な大陸の覇者となりましたが、ペルム紀末に起こった史上最大の大量絶滅により、そのほとんどが姿を消してしまいます。
2020年には、日本の研究チームにより、大規模な火山噴火が大量絶滅の原因になったという説が発表されました。こうして古生代は終わりを告げたのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。
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公開日:2022.11.29