お金はどう生まれ、なぜ総量が増えていくのか?
貨幣には「紙幣」と「硬貨」の2種類があり、前者は日本の中央銀行である日本銀行が発行し(日銀券)、後者は日本政府が発行します。「紙幣」は軽いので、持ち運びに便利ですが、わずか数年で、汚損・破損しやすく、一方「硬貨」は頑丈ですが重いので、両者は補い合う関係です。
貨幣がない時代は物々交換が主で、交換したいモノが一致しないなどの不便を強いられ、米や塩、金属が代替するうちに、やがて金・銀・銅を中心に「硬貨」が生まれます。(683年「富本銭」)。硬貨が流通するのは
12世紀以降鎌倉時代からです。
次いで紙幣が生まれるのは江戸時代からですが、幕藩体制での藩札を経て、明治維新後の統一通貨「円」を単位とする紙幣が登場します。この時紙幣が、ただの紙切れでないことの信用補完で、「金本位制」(同価値の金貨と交換できる)が導入され、やがて二度の世界大戦を経て、各国とも中銀による現在の「管理通貨制度」へと移行しました。ところで、2021年6月時点の紙幣の実際の発行残高は約121兆円です。
しかし、日銀が世の中に供給するお金の量は、同時点で648兆円です(マネタリーベース=「日銀券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金残高」)。さらに金融機関から世の中に供給されるお金の総量(マネーストック)は、それぞれ金融商品の違いで、M1、M2、M3、広義流動性の4つに分かれ、広義流動性では約2000兆円にも及びます。
世の中のお金の総量が、紙幣の発行残高以上に膨らむのは、「信用創造」というお金特有の働きです。左図の通り、銀行が預金と貸出を繰り返すことでお金の総量は増えていくのです。
出典:眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済とお金の話』
神樹 兵輔 著
日本社会をとりまく環境は日々変化を続けています。特にここ数年、令和の時代に入って、日本も世界も大きな変化が起こっています。日本の経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を知ることにもなります。本書は〝経済のことは難しくてよくわからない〟というような人たちに向け、最低限知っておきたい経済の基本を身近なテーマと共に解説、読み解く一冊です。行動経済学から、原価や流通や利益のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済やお金のことを、図とイラストでわかるやすく解説していきます。経済のしくみや原理原則を理解しないまま日常生活を過ごしていると損をしてしまうことになってしまいます。賢く今の世の中を生き抜くためには、世の中の動きやそこに潜む経済のメカニズムを理解することは必要不可欠なものです。
公開日:2022.02.11