『論語』は、紀元前六〜五世紀頃の中国の思想家、孔子の教えをまとめたものです。
その当時の中国の思想家は、ただ学問をするだけではなく、実際の政治にも参加していました。孔子もその例に違(たが)わず、政治にかかわることを希望したのですが、孔子の諸説は理想的過ぎるという理由から、受け入れてはもらえなかったのです。
そこで孔子は、地方各地を遊説(ゆうぜい)して歩くようになりました。地方では、孔子の考えに共感する人々が増え、弟子として教えを請(こ)う人が集まるようになったのです。弟子には、一般の庶民から大夫「たいふ(役所の長官)」まであらゆる階層の人がいました。三千人ともいわれる大勢の弟子に囲まれた孔子は、独特の方法で教育にあたりました。弟子の個性や性格に合わせた、きめの細かい指導です。
ところが、孔子が亡くなると、その指導が裏目にでて、孔子の教えを受けた弟子たちの間に、齟齬(そご)が生じていることがわかってきたのです。
ちょうどその頃、中国では諸子百家「しょしひゃっか(いろいろな思想家)」が出現し、様々な主張を繰り広げるようになっていきました。
弟子たちは、孔子の教えを流布(るふ)するために、教えを一本化して集大成しなければならないと考えたのです。
こうして、弟子たちの力で誕生したのが『論語』だったのです。孔子の死から、百年ほどが経っていました。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 論語』
監修:山口謠司 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1963年長崎県生まれ。博士(中国学)。大東文化大学文学部大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現大東文化大 学文学部中国学科准教授。 主な著書に『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『日本語を作った男 上田万年とその時代』(第29回和辻哲郎文化賞を受賞。集英社インターナショナル)、『日本語の奇跡〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明』『ん─日本語最後の謎に挑む─』『名前の暗号』(新潮社)、『てんてん 日本語究極の謎に迫る』(角川書店)、『日本語にとってカタカナとは何か』(河出書房新社)、『大人の漢字教室』『にほんご歳時記』(PHP 研究所)、『漢字はすごい』(講談社)、『語彙力のヘソ』(徳間書店刊)、『おとなのための 1 分読書』(自由国民社)など著書多数。
2500年の時を超え、「聖書」と並び読み継がれてきた孔子の言葉を著した『論語』。「人生最高の教え」と賞される、この全20章500余の短文から現代により通じる「珠玉の言葉」を厳選して紹介、図解でわかりやすくまとめた1冊!
公開日:2023.02.01