三国志の主役たちが続々登場
黄巾賊の鎮圧後、忘れられた憾みのあった劉備にも、ようやく冀州中山国安喜県の尉に任命の汰が下った。劉備は、関羽、張飛ほか二十名ほどの兵士を引き連れて安喜県に赴任する。このときの劉備の治世は、庶民をまっとうに遇するものであったため大いに喜ばれた。
赴任後、四か月ほど経つと、督郵が巡察として到着した。督郵とは郡太守の属官で視察官のこと。その督郵は紛れもなく腐敗官僚だった。
横柄な態度で劉備の出自に難癖をつけ、賄賂を要求する素振り。劉備が出さぬと知ると、県役人に劉備を悪人に仕立てる調書の作成を強要する。
これを知った張飛は、怒り心頭に発し、督郵を宿舎から引きずり出して杭に縛りつけて、折り取った柳の枝で打つことの凄まじさ。劉備が駆けつけると、張飛は「こんな民を害する悪党など、死ぬまで殴らずにおくものか」と息巻くばかり。現れ出た関羽も「こんな督郵ごときに侮られるのであれば、ここは兄貴のような鳳凰の住む場所ではない。こいつを殺して官位を捨て、よそで大計を立てたほうがましだ」と言う。
督郵はもう必死の命乞い。劉備は苦笑して、そこは仁愛の人、「本来ならば殺してしまうところだが、一命は助けてやる」と、皇帝から授かった官吏を証明する印綬を督郵の首に引っ掛け、関羽、張飛とともに安喜県を出奔するのである。
時も時、そんな地方の瑣末な出来事など記録にも止めぬような激震が後漢朝廷を襲っていた。
霊帝側近で専権を振るっていた十二人の宦官、称して十常侍が、黄巾賊討伐で勲功多い将兵に賄賂を要求し、拒否する者を放逐するという無道振り。皇甫嵩と朱儁も無体に肯んじなかったため、宦官が霊帝に上奏して罷免するのである。思うに、後漢末期、霊帝と先の桓帝は宦官を重用し、後漢を衰亡に追いやった愚か者と言うしかない。
さて、朝廷の汚濁は見るも無残な様相を呈していたが、その悪気は民心の恨みを滾らせ、危うい黒雲をたなびかせた。危惧は的中し、南方の藩国
長沙の盗賊区星が反乱、さらに幽州漁陽郡の元中山太守張純と烏丸属(北方の異民族)の丘力居が共闘して兵を挙げる。
一大事の上奏文は頻々と朝廷に届けられたが、ことごとく十常侍は握りつぶす。霊帝は一人蚊か帳やの外で酒宴に遊ぶ始末。見兼ねた清廉の官僚が諌めると、宦官の肩を持つ霊帝に処刑されるという愚挙に遭う。
幸い、区星の反乱は、宦官の偽りの詔で長沙太守に任じられた孫堅が平定。張純・丘力居の反乱は、幽州牧の劉虞が討滅に向かう。
ここで流浪の劉備が劉虞に引見され、麾下として掃討に参陣。功を立てたために督郵打擲の罪が許され、青州平原県の県令代行に任じられるのである。
『図解 三国志』はこんな人におすすめ!
・中国の古い歴史に興味がある!
・昔の人は何のために争っていたのか?
・三国時代や格言について学びなおしたい
と感じている方には大変おすすめな本です。
魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面、また「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」「髀肉の嘆」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。また、曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!
シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ
図解シリーズは、右側に文章、左側に図解で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。
図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!
気になる中身を少しだけご紹介!中国では、「革命」によって新たな王朝に禅譲されるのが約束事
『三国志』は「紀伝体」で書かれました。帝の記録「本紀(略して紀)、それ以外の人物の記録「列伝(略して伝)」で構成される歴史書です。陳寿は『三国志』を書くに際してあれこれ惨憺したらしい。魏の曹操(155~220)没後、息子の曹丕(187~226)が皇帝を名乗り、であればと蜀の劉備(161~223)、次いで呉の孫権(182~252)も皇帝を名乗った。
でも、三国に帝(皇帝)がいるというのは古来の中国ではあってはならないこと。天が命じた天子に地上を治めさせるので、天子は一人でなければならなかった。しかし、その天子が徳を失えば、徳のある天子に禅譲することになります。だから陳寿は、後漢の献帝(181~234)から禅譲(実際は簒奪)されたとする魏を正統とすることによって、魏から禅譲(これも簒奪)されたとする西晋を正統とせざるを得ない。
ほんとうは後漢の正統を継いでいるのは、漢王室の末裔とされる劉備が興した蜀と思っていても、陳寿はそうは書けない。故国蜀の滅亡で晋に職を求め、史官として三国の歴史を書くために仕えている身としては、晋朝廷から覚えめでたくあらねばならない、きっとそう悩んだ。
結局、陳寿は「魏書」に「本紀」を置かざるを得ず、「武帝紀(曹操)」「文帝紀(曹丕)」から最後の皇帝「元帝紀(曹奐)」まで著しました。じゃあ、劉備や孫権をどう扱ったか?「蜀書」に「先主伝」を立て、劉備を“先主”と呼ぶ一方、「呉書」の「呉主伝」では孫権は一貫して“権”。「列伝」では当該人物名を生前名の諱で呼ぶのが原則なのに、劉備に関してはその慣例を無視。まさに陳寿は蜀びいきなんですね。
★三国志演義の物語
★赤壁の戦いの真実とは?
★三国志の始まりとは
★知っておきたい軍事制度とは
などなど気になるタイトルが目白押し!
『三国志』には、心打つ名言や現代にも通じる格言が多くあります。曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、など魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、名場面を図解でわかりやすく解説しているので「三国志」の学び直しに是非読んでいただければ幸いです。
【書誌情報】
『図解 眠れなくなるほど面白い 三国志』
渡邉義浩 監/澄田夢久 著
魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面や「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!
公開日:2023.02.05