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「赤壁の戦い」曹操は赤壁で大敗【三国志】

Text:澄田 夢久

関羽の情けにすがる曹操

十一月二十日夜半、「先鋒黄蓋」と大書した旗印を陣頭に、黄蓋の火船二十隻が青龍旗を立て、赤壁へと漕ぎ出していく。後方には韓当の第一隊、周泰の第二隊、蒋欽の第三隊、陳武の第四隊がそれぞれ三百隻の軍船を率いている。各隊の前には別動の火船が二十隻ずつ川面を滑っていく。

曹操が高台から対岸を眺め見ていると、斥候が「どの船にも青龍旗が上がっています。〝先鋒黄蓋〞と書かれた船が先頭です」と一報を告げた。曹操は、黄蓋がようやくやってきたかと、至極満足の体だ。と、じぃっと目を凝らしていた程昱が、「ああ、あの船は偽船だ。本営に近づけてはなりません!」と悲痛な叫びを発した。

曹操は、訝しげに振り返った。程昱は、先に曹操宛に届けられた「今夜、食糧を積んで出船する」との黄蓋の密書を確かめていた。「食糧を積み込んでいるのであれば、あれほど船足は速くないはず。しかも喫水が高い」。程昱の推断に、曹操は狼狽えた。曹操の軍船に動揺が伝播していく。

その混乱を眺めながら、黄蓋が合図の刀を一閃した。二十隻の火船はいっせいに火を吹き、東南の風に押されて、水軍本営に突っ込んでいく。火船の熱いきり立つ炎は、須臾の間に曹操船団に燃え移る。各隊の火船も四方から襲いかかり、炎が龍舌のごとくに曹操船団を舐め尽くす。

炎に煽られた風はますます吹き荒れ、長江の川面を紅蓮に染め上げ、曹操の軍兵は阿鼻叫喚の中に逃げ惑った。曹操は、戦局に利なしとして本船を捨て、張遼の操る小舟に乗り込んで岸辺へ向かう。曹操に取り残された軍船には、左右から韓当、周泰らの四隊が、真ん中を周瑜、程普、徐盛、丁奉の本隊軍船が突進し、蟻ありを踏み潰すように曹操軍を殲滅していく。曹操軍の死者は、数えるのも哀れな死屍累々だった。

周瑜が交戦を唱えたのは、諸葛亮の舌三寸にも拠っていた。呉郡に曹操は、張遼に護られながら騎馬で烏林へ落ちていく。迫り来る呉兵を振り払いながら、張郃と遭遇し、烏林の西に辿り着いた。やがて李典と許褚も合流する。目指すは江陵である。烏林からは遥かに遠い。

空腹を抱えて退却する曹操に、趙雲の一難が、振り切ると張飛の二難が襲う。ようよう死地を脱して峻険な山道を乗り越えた先は、華容だった。残兵は三百余騎、三分の一に減っていた。

突然、曹操は馬上で鞭を突き上げ、笑い出した。「諸葛亮は智謀に長たけているというが、なんのなんの無能だわい。ここに伏兵を潜ませておけば、われらは生け捕りにされるだろうに」

だが、その言葉が終わらぬうちに、道端から五百の兵が抜刀して現れた。武将は……赤兎馬に跨り、青龍刀を引っ提げた関羽だ。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 三国志』
著:澄田 夢久 監修:渡邉 義浩

シリーズ累計発行部数160万部突破の人気シリーズより、「三国志」について分かりやすく解説した一冊。魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面、また「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」「髀肉の嘆」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。また、曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!

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