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関羽は義によって曹操を見逃す【三国志】

Text:澄田 夢久

赤壁の戦い、クライマックスへ

「将軍、一別以来であるな。お変わりなかろうや」「それがしは、丞相が必ず華容道を通るはずだからとの孔明どのの命により、お出でになるのをお待ちしておりました」二人は挨拶を交わしながら辞儀をする。このときの呼吸が勝負を決した。「孟徳は、もはや逃れる道はない。昔の誼よしみで将軍の慈悲に縋すがるしかない」「あいや丞相、それは……顔良、文醜を斬ったことでお返ししたはず……」

「将軍が許都を去ったとき、わが部将六人を斬ったことをお忘れか。わしが追っ手に手を出さぬように命じたのだ。将軍は〝義〞を重んじる大丈夫である。『春秋』の庾公之斯と子濯孺子の故事を思い出してもらいたい」

この故事は、春秋時代、鄭軍の将で病を得た子濯孺子が弓矢を取れなかったとき、かつて子濯孺子の弟子に弓矢の術を学んだ敵国衛軍の将・庾公之斯は射殺すことができず、鏃を抜いた矢四本を弓で放って去っていったという逸話である。関羽は、絶句。「是非もなし」と呟つぶやき、華容道に曹操一行を見逃すのだった。

諸葛亮は、曹操の逃げ道を予見し、趙雲を烏林に伏兵させ、張飛は葫こ蘆谷に潜ませた。関羽には華容道で待ち伏せを命じたのだが、関羽のこの顛末は初めから見越していた。諸葛亮は、関羽を処罰し、斬ろうとするが、それは芝居。劉備が助命の指示を出すのを待って罪を減じたのである。

さて、九死に一生を得た曹操は、従弟曹仁の出迎えにより、南郡の城へ入った。体を休めた曹操は、荊州南郡を曹仁に、襄陽は夏侯惇に任せて許都に帰還。曹操は、捲土重来を期すことになる。

一方、周瑜は勝ち戦の始終を孫権に復命。美酒に酔う間もなく劉備がとどまる油江口へ向かう。劉備の佇まいは、すでに太守のごとく。油江口は、油江が長江に流れ込む地点。赤壁の戦いのあと、劉備はここに城を築いて軍を駐屯し、公安県を置くことになる。

周瑜にとって、劉備や諸葛亮らは憎っくき奴腹である。だが、いま戦う相手は、南郡を守る曹仁と曹洪だ。南郡を手に入れ、呉の領土にしなければならない。勢力を増し、曹操との再びの戦いを勝ち抜かなければならないのだ。

心を残して周瑜は南郡へ向かう。曹仁と周瑜は、計略を駆使して戦うが、勢いは周瑜が上回っていた。曹仁、曹洪は南郡を捨て、襄陽を目指して退却していく。

ところが、その隙に諸葛亮が南郡を占拠し、偽の割符で夏侯惇を曹仁の救援に向かわせ、手薄になった襄陽城を関羽に奪い取らせたのである。労せずして南郡と襄陽を手にした諸葛亮の策謀、これぞ「漁父の利」と言うべきや。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 三国志』
著:澄田 夢久 監修:渡邉 義浩

シリーズ累計発行部数160万部突破の人気シリーズより、「三国志」について分かりやすく解説した一冊。魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面、また「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」「髀肉の嘆」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。また、曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!

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