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生命が誕生したのはなぜ海の中だったの?【生物の話】

Text:廣澤瑞子

~化学進化と生命の誕生~

地球誕生はおよそ46億年前。それからしばらく、地表はマグマの海に覆われていました。それから6億年ほどが経過すると、冷やされたマグマは陸地になり、その際に発生した水蒸気が海になっていきました。そのような状況の地球で、いよいよ生命が誕生します。それは海の中でした。では、なぜ陸上ではなく海中で生まれたのでしょうか。

原子の海には、生命を構成する重要な要素である「有機物」が豊富にとけていたからです。有機物とは、炭素を成分として含む化合物の総称で、アミノ酸、糖、核酸塩基、などがそれにあたります。

太陽光線の紫外線や雷の激しいエネルギーにより、大気中の無機物から有機物が生成した可能性は、有名なミラーの実験によって示されています。また、地球に衝突した小天体からも有機物はもたらされたと考えられています。

これらの有機物は雨とともに降り注ぎ、海に蓄積されていきました。アミノ酸、糖、核酸塩基などの低分子有機物は、互いに繋がりやすいという性質を持っています。海底にある火山から供給される熱エネルギーによって、低分子が結合し、タンパク質、炭水化物、核酸などの複雑な高分子有機物になっていきます。海底に堆積する金属化合物に有機物が吸着し、低分子がつながっていく化学反応を促す触媒の役割を果たしました。

地表を飛び交う紫外線や荷電粒子は、これら高分子をズタズタにしてしまうほどの破壊力があります。海はこれらをはねつけ、高分子有機物を優しく包み込みました。こうして生命が誕生したのです。海はまさに生命のゆりかごだったのです。

原始地球の様子と有機物の生成【生物の話】

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。


「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!

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