~多細胞生物の個体の成り立ち~
地球上に生命が誕生したのはおよそ40億年前のこと。分子の互いに繋がるという性質を元に、複雑な分子が形成されていき、最初の生命体の誕生に至りました。誕生した当初、生命はたった一つの細胞(単細胞生物)でしたが、さらに細胞同士も繋がって、さまざまな機能を補完しあいました。こうして多細胞生物が出現したのです。
細胞は英語ではcell と呼ばれます。表計算ソフトエクセルの「セル」と語源は同じで、ギリシャ語で「小さな部屋」という意味です。その名の示すとおり、細胞膜に覆われた小さな部屋の中に、遺伝情報を格納している核、エネルギー生産工場であるミトコンドリア、タンパク質の製造工場であるリボソームなどの細胞小器官が収まっています。生命活動を支える最小単位が細胞です。
サブタイトルの「多細胞生物」とは、複数の細胞からなる生物のことです。生物は、いったいいくつの細胞から成り立っているのでしょう。ヒトを例にあげてみましょう。人体1キログラムあたりの平均細胞数は1兆個。つまり体重が60キログラムならば約60兆個の細胞を持つことになります。これら細胞は、それぞれに与えられた役割を日々モーレツにこなしてくれています。そして、細胞によって周期は異なりますが、1日から数か月程度で死を迎え〈※1〉、新たに生まれた細胞がその仕事を引き継ぐのです。細胞の入れ替わりは、1分間に数億個にもなります。私たちの日々の活動はこうした細胞の献身に支えられているのです。
※ 1:骨細胞の寿命は数十年
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.10