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細胞は自殺する!?【生物の話】

Text:廣澤瑞子

~アポトーシス~

カエルの幼生おたまじゃくしは体の半部ほどを占める立派なしっぽが印象的です。カエルに変態すると、そのしっぽは消失してしまいます。このときしっぽでは、細胞にあらかじめプログラムされていた細胞死・アポトーシス〈※1〉がおこっています。

アポトーシスとは、細胞が自ら死を選ぶ、いわば細胞の自殺です。カエルの変態のように、あらかじめ決まった時期に決まった場所で自殺がおこるよう、遺伝子上に厳密にプログラムされています。つまり衝動的な死ではなく、決意の自決というわけです。

また、細胞に異常が生じた際に、細胞自ら死を選ぶ場合があります。こちらは決まった条件下で起動するいわば「自爆装置」に例えることができます。生体にとって有害な細胞を取り除くことが目的で、細胞死がおこるのです。

アポトーシスのスイッチが入ると、まず、細胞内の核に大きな変化がおこります。核は凝縮し、DNAが断片化され、やがてアポトーシス小体というばらばらな状態になります。その後マクロファージなどの食細胞に小体が食べられることで、細胞は完全に姿を消すのです。このとき、細胞の内容物が一切外に流出しない点が驚きです。

アポトーシスと対照的な細胞の死を、ネクローシスと呼びます。こちらはいわば「事故死」。感染、物理的破壊、化学的損傷など、たとえば、転んで擦り傷ができることによって細胞が死に至るケース。受け身の死をいえるでしょう。

※1:アポトーシスはギリシャ語で、枯葉が落ちることを意味している。

アポトーシスとネクローシス【生物の話】

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。


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