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ソメイヨシノはすべてクローン?【生物の話】

Text:廣澤瑞子

~植物の交配~

4月にもなれば、天気予報でその日の天候だけでなく、桜の開花予想も知ることができます。今日の日本人にとって桜は、それくらい親しみのある花です。

ここでいう「桜」はソメイヨシノのこと。日本全国北から南まで植樹されているこの木々すべてが、実はたった一本の樹を起源とするクローンであること、知っていましたか。

ソメイヨシノは遺伝子解析から、エドヒガンとオオシマザクラの雑種の交配から生まれたことが明らかになっています。その起源は、江戸時代末期、植木職人が集まっていた江戸の染井村〈※1〉で売り出された「吉野桜」であると考えられています。吉野は、奈良県の地名。桜の名所として有名だったので、職人さんたちはその人気に便乗したのでしょう。

「吉野桜」が名称をソメイヨシノに変えたのは明治時代のこと。藤野寄命という学者が上野公園の吉野桜を観察し、吉野のヤマザクラとはまったく別種であることを突き止めました。藤野は、その桜を染井村の名を取ってソメイヨシノと名付けたのです。

ソメイヨシノは自家不和合性といって、花粉が受粉しても受精に至ることが困難です。ソメイヨシノ同士の受粉であれば受精できないため、接ぎ木などによるクローン以外、増やす方法がないのです。すべての樹が同じ遺伝子を持つクローンであるのは、ここに理由があります。

ただし、ソメイヨシノに子孫を残す力がないわけではありません。地域に自生する野生のサクラと交雑してしまうことがあります。既存種に対する遺伝子汚染として問題になっています。

※1:現在の東京都豊島区駒込付近

ソメイヨシノは自家不和合性『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。


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