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三毛猫はなぜメスばかりなの?【生物の話】

Text:廣澤瑞子

~X染色体の不活性化~

三毛猫はオレンジ(茶)・黒・白三色の毛を持つネコのこと。日本ではわりと身近に見られますが、海外では珍しいらしく、日本猫を起源とするジャパニーズボブテイルの三毛は「Mi-ke」と呼ばれ、人気も高いようです。

三毛猫の解説に移る前に、猫の体毛色について説明しましょう。猫の体毛色は、オレンジ・黒・白の3色です。これらの色は単体や、いずれか2色が混ざりあって現れたりします。どの色をどのように選択するかはランダムですが、当然親から受け継いだ遺伝子が影響します。色に関する遺伝子は、白と黒は常染色体に格納されていますが、オレンジだけはX染色体内にあります。これが三毛猫誕生に大きく関係します。

染色体についても簡単に説明します。細胞分裂期に観察される棒状の構造体で、遺伝情報の発現と伝達を担います。性決定に関与するものをX染色体、Y染色体といい、それ以外を常染色体といいます。保有する染色体は雌雄により変わり、雌はXX、雄はXYとなります。XとYでは遺伝子の格納数に格段の差があります。そのままでは雌のほうが多くの遺伝子を持つことになってしまうので、雌はXのどちらか一方を不活性化という形で眠らせてしまいます。

三毛猫はこの不活性化の影響で生まれます。不活性化の選択は完全にランダム。それぞれの細胞が2分の1で眠るかどうか決めていると考えてください。眠らなければ、そこにはXの持つオレンジ色の遺伝子が発現します。眠ってしまえば、常染色体上の黒か白の色が発現します。そうやって3色のまだら模様ができあがります。三毛猫がメスばかりなのも、X染色体を2本持つ個体にしか発現しないからです。

三毛猫の染色体『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。


「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!

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