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4.古代王国とピラミッドを生んだ母なるナイル【世界史】

Text:鈴木 旭

上下エジプトの二大勢力を合体し、統一する母胎が形成される。

現代のエジプトは砂漠地帯にあるので「砂漠の国」のように思われているが、古くから「ナイルの賜物(たまもの)」と言われる大河の恵みによって、確実に営まれる緑豊かな穀倉地帯であった。

毎年七月から十月になるとナイルの大河は増水し、上流から肥沃な腐葉土を含む泥水を運んで来てくれるからだ。氾濫を繰り返して周辺の土を肥やしてくれるので、特に肥料を与えなくても年に2~3回も収穫できたのである。

ナイルの流れはチグリス=ユーフラテス川のような暴れ川ではなく、いつも穏やかだったので、古代エジプト人は「ベイスン・システム(溜池灌漑法)」を管理すれば差しさわりがなく、それぞれのノモス(州)ごとに公正な土地の分配と管理ができた。水争いはなかったという。

このエジプトで人びとが定住し、農業を営むようになったのは紀元前5,000年頃であり、確実な農耕の痕跡はそれから500年後、モエリス湖畔のファイユーム文化が初見になる。穀物を栽培し、羊と山羊を飼育していた。エジプトはこの後、上下に分かれて発展し、統一される。

下エジプトはカイロ周辺で小麦、大麦を栽培し、牛や羊、豚、山羊を飼育していたが、集落の痕跡は見られるものの、道具類は乏しかった。シリア、キプロス、メソポタミアと共通するものが多く、その影響下にあったものと見られる。

間もなく、デルタの付け根にあるマーディ遺跡(紀元前3,500年)に引き継がれるが、この頃、上エジプトで隆盛を誇るナカダ文化の強い影響下に置かれ、独自性を失って行く。上エジプト主導の王権が成立し、上下エジプト統一の機運が盛り上がって行くのは間もなくのことである。

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。

いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。