皇帝と教皇、諸侯間の抗争の渦中で台頭する都市国家
九世紀末にカロリング家のフランク王国が途絶えた後、イタリアはローマ教皇や封建諸侯が分立し、ドングリの背比べで抗争を繰り返す国になってしまった。加えて、神聖ローマ帝国(ドイツ)の歴代皇帝がイタリア支配を企て、遠征を繰り返したため、混乱するばかりであった。
こうした中、南部では一一三○年、ローマ教皇に忠誠を尽くすノルマン人騎士団が、イスラム勢力を駆逐し、南イタリアとシチリア島を併合する両シチリア王国を築いた。これに対し、中部、北部では、封建諸侯の抗争やドイツ皇帝の進出、ドイツ皇帝とローマ教皇の衝突が続く中、有力都市が自治権獲得、自立の道を選択する。
たとえば、ベネチアは元々、南ドイツ方面からライン川を通じて北ヨーロッパと通じていたが、さらにビザンツ帝国に対抗し、新たに小アジア方面に進出。レバント交易(東方貿易)を推進する。フイレンツェは羊毛業で繋がった。十二世紀後半、ドイツ皇帝が介入してくるが、ベネチアを盟主としてミラノ、ジェノバ、ボローニャなど二十二都市がポンテイーダ修道院に集結。有名なロンバルディア都市同盟をドイツ皇帝に対する好守同盟として結成し、対抗する。
三十年後、ドイツ皇帝は和約に応じて撤退。以後、ベネチア、ジェノバ、フィレンツェなど有力な自由都市は独自貨幣を発行するなど自治共和国、すなわち、自由都市国家として発展する段階へ進む。そして、周辺都市を支配し、海外領土までも占有するようになる。市政も富も有力家門によって独占され、寡頭支配が定着するのである。さながら旧ローマ帝国の再来のようだった。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊
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公開日:2023.01.07