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23.続々と輩出する群小諸国の大陸詣で【世界史】

Text:鈴木 旭

後漢光武帝に通じた北九州の「漢委奴国王」。

江戸期の天明4年(1,784)、九州博多の志賀島で「漢委奴国王」と陰刻された金印が発見された。読み方は「かんのわのなのこくおう」であるとされ、「漢(後漢)に従属する倭の奴国」に与えられた金印であると説明されてきた。

しかし、中国歴代王朝の皇帝が冊封国の王に与えた金印の中に「漢の●の●の国王」に与えるという事例は見当たらない。すなわち、陪臣に与えられることはないということだ。博多湾周辺の小国が授かることはないのである。

従って、長年の紆余曲折を離れ、素直に「かんのいとこくおう」と読むのが順当であろう。『後漢書』「東夷伝」にも「建武中元2年、倭奴国、貢を奉じて朝賀す。使人自ら大夫と称す、倭国の極南の界なり、光武、印綬を以て賜う」と記述されているが、「大夫」と称する朝賀使が「委奴国王」に与えられた金印を預かったと解しておこう。

では、奴国がどこにあったのか、どれくらいの規模であったのか、不明のままである。国家形成途上にある集団だったと想定される。後世の『魏志』「倭人伝」に記された卑弥呼の邪馬台国でさえ、複数の小国が連合体として集合する原始的国家であったと伝えられる。

そういう不安定な形成途上の原始的国家だからこそ、連合体を形成する諸小国を監視するため、〝伊都国〟には魏の派遣官「一大卒」が置かれていた。この伊都国に発展する母胎こそ、この金印に記された「委奴国」だったのではあるまいか。

神武天皇の即位紀元同様、具体的な確定的情報に乏しい。北九州各地で出土する銅鏡、青銅器類の他、甕棺(かめかん)、箱式石棺、支石墓の解明はまだ終わっていない。答はまだ出ていない。

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。

いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。

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