神様と人間の生命力を更新するため
第10代崇神天皇の御代のことです。疫病の大流行が起こり、このままでは国が滅びるのではと思われるほどになったことがありました。心を痛めた天皇が神かむ牀どこという神のお告げを受けるための寝台でお眠りになったところ、夢にオオモノヌシ(大物主の大神)*が現れ、こう言ったのです。「この疫病は私が起こしたのだ。オオタタネコという者を探し出して私を祀まつらせれば、疫病は治まり、世は平穏になるであろう」オオタタネコはオオモノヌシが美女のもとにかよって生ませた男子です。天皇は臣下を派遣して彼を探し出させ、オオモノヌシを祀らせたところ、お告げどおり疫病は治まりました。この話から神様は人に祀られることを望んでいることがわかります。なぜでしょうか。
神道では実にさまざまな神様が信じられています。その中でも人に祭祀を求めるのは、人との関わりが濃い神様のように思えます。氏神や産土神、作物や食べ物の神、職業の守り神、火や水の神などです。これらの神様は人間社会にいろいろな働きかけをしてくれます。それによって人の暮らしは豊かになるのですが、神様も働きかけが続けば、力が衰えるのです。そこで力を蘇らせるために、採れたての作物や獲物などを供えること(祀り=祭り)を求めるのです。それによって霊力を復活させ、また人に幸いを与えられるようになるのです。人間のほうも働き続けでは消耗してしまいます。祭りに参加して神様から霊力を分け与えていただくことで、生き生きと過ごしていくことができるようになるのです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 神道』
著:渋谷申博
「神道には教義がないって、本当なの?」「八百万の神々の中で一番偉いのは、誰?」「鳥はいないのに、なぜ鳥居というの?」 神道の起源から日本の神様、開運神社のご利益まで楽しくわかる! 古代から伝えられてきた日本の心──神道。その奥深い世界を57項目の素朴な疑問からズバリ解説しす。
公開日:2021.06.04