バラは3万種、ランは野生種で2万6000種
バラは花の女王ともよばれ、昔から品種改良がなされ、いまでも新種のバラが開発されています。その数、世界で3万種ともいわれます。一方で、もとをたどると原種は10種類ほどです。バラ以外で種類の多い花は、ランです。品種改良によらない野生種でも、およそ2万6000種もあります。花の数を競うなら、バラのほうが種類が多いものの、野生種だけではランが多いといえます。ランは恐竜時代の終わり、白亜紀後期に出現した最後の被子植物です。ランは花の姿かたちに多様性があり、被子植物のなかでもっとも種類が豊富です。そのため、観賞価値が高いものが多く、栽培や品種改良が世界中で行われています。また野生種のランの一つひとつには、花粉を運ぶ昆虫がそれぞれ決まっていて、被子植物の中では進化した受粉の仕方をします。しかし近年、野生のランが絶滅し、ランの蜜を求めてともに生きてきた昆虫も危機に瀕しています。生命の多様性が失われる危険性は、ランに象徴的に表れているといえます。
開店祝いなどでよく見かける花はラン科のなかでもコチョウラン(胡蝶蘭)です。大きく白い清楚なチョウが何頭も舞っているような様子は、いかにも幸運と繁栄を運んでくれそうな雰囲気を醸し出しています。コチョウランは本来、フィリピン諸島から台湾南部にかけて自生するファレノプシス・アフロディテ(コチョウラン属)につけられた和名です。このアフロディテや自生地がオーストラリアにまで及ぶファレノプシス・アマビリス(コチョウラン属)などを原種として品種改良が行われ、大輪の花や中くらいの花を咲かせるコチョウランが1年中安定して出荷されています。
『図解 植物の話』はこんな人におすすめ!
・光合成はなぜ必要なのか?
・葉と花はどんな関係にあるの?
・今こそもっと植物の世界を知りたい!
と感じている方には大変おすすめな本です。
色仕掛け、数学の応用など、植物のたくみな戦略を徹底解説!生き残りをかけたすごいサバイバル術やしくみを、わかりやすい図解とイラストで紹介しました。「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」「植物は数学を知っている?」「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく解説します!
シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ
図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。
図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!
気になる中身を少しだけご紹介!今こそ知りたい植物の奥深い世界!!
植物にも血液型があるってホント?
わたしたちの体を流れる血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンを調べると、分子が植物の葉緑素、クロロフィルとそっくりです。違うのは、真ん中にある元素がヘモグロビンは鉄、クロロフィルはマグネシウム、たったそれだけの差です。それなら植物には、人間と同じような血液型があるのでしょうか。じつは、血液型をもつ植物はけっこうあります。人間の血液中は血中の「糖たんぱく」の種類で決まります。1割くらいの植物は、人間と似た糖たんぱくをもっていることが知られています。植物の血液検査の結果、O型やAB型が多く、たとえばダイコンやキャベツはO型、ソバはAB型となるそうです。植物を切っても動物のように出血しませんが、動物と植物の基本的な生き方には似たところがあります。マメ科植物には、ヘモグロビンに似たクロロフィルのほかに、レグヘモグロビンがあります。名前からわかるように、レグヘモグロビンはヘモグロビンに似た働きをします。それは両者ともに酸素を運ぶ役割をしていることです。
では、レグヘモグロビンはいつ酸素を運ぶのか。まず、マメ科植物には根に丸い「根粒」とよばれるコブがたくさんあります。この中に「根粒菌」というバクテリアがいて、空気中から窒素をマメ科植物に供給します。代わりにマメ科植物は、根粒菌にすみかと栄養分提供しますから、マメ科植物と根粒菌は「共生」という互いに利益を得る関係です。しかし、根粒菌が窒素固定をするときにジレンマが生じます。根粒菌は窒素固定に必要なエネルギーを確保するために酸素呼吸をしますが、窒素固定に必要な酵素は、酸素があると活性を失うのです。そこで、マメ科植物はレグヘモグロビンを根粒菌に送って、素早く余分な酸素を運んで取り除きます。
★葉っぱの形が植物によって違うのはなぜ?
★なぜ春先に花粉症になるのか
★植物はどうやってあちこちに子孫を増やすの?
★光合成をしない植物も存在する?
などなど気になるタイトルが目白押し!
今こそもっと知りたい「植物の世界」が丸わかり!
執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
稲垣 栄洋
色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説!図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!植物たちの巧みな戦略とたくましい生き様が見える一冊です。
公開日:2023.06.03