幹の太さではメキシコのトゥーレの木といわれているが……
巨木あるいは巨樹というと、高さよりもむしろ太さが問題となります。幹が太ければ樹高も高く、枝ぶも立派なものが多いので、太さがまず基準となるのです。
世界中の人間は昔から巨樹に神秘と恐れ、畏敬の念を抱き、そこに神が宿るとしてきたことは、神話や伝承などから伺えます。
日本の樹木で最大の幹周りを誇る木は、鹿児島県姶良市(あいらし)、蒲生八幡神社境内にある蒲生の大楠(クスノキ)です。国の特別天然記念物で樹齢は推定約1500年。幹周り24.2m、高さ30mという古来神木とされてきた木です。
日本では幹周り12m 以上の巨木は117本あり、内訳はクスノキ48本、スギ24本、イチョウ18本、カツラ11本、ほかにケヤキ、ガジュマルなど、6種類の樹木が各1~5本と続きます。
人が両腕を広げると、ほぼ身長くらいの長さになります。すると身長1.7m の人が日本一の木の幹の周りに腕を広げて囲むと、およそ14人以上の人が必要となります。
世界を見ると、ギネスブックに登録されたメキシコのトゥーレの木(スギ科)の幹周りは、公式では36.2mでしたが、高さ1.3mでの計測値は45mだったという文献もあります。両腕を広げた身長1.7mの大人が26人以上いてやっと囲めるくらいの太さです。
このクラスの太さは、南アフリカにあるBigTreeとよばれるバオバブの木にもあります。
さらにアメリカ・カリフォルニアには幹周り約31〜33mのセコイアデンドロン(スギ科)の木が2本あり、南北戦争当時の北軍の将軍の名がつけられています。高さは80mを超えていますが、高さの点では世界一ではありません。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。
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公開日:2023.04.02