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なぜ植物の性はややこしいの?植物が種子を作る上で生殖器官が複雑なワケとは?【植物の話】

Text:稲垣栄洋

花は生殖器官で有性生殖で種子をつくるが、無性生殖もあるから

全陸上植物の約90%をしめる被子植物の多くは、めしべ、おしべがひとつの花にある両性花ですが、トウモロコシのように、1本におばなとめばながあって、それが違う位置にある被子植物もあるので、植物の性は一筋縄ではいきません。

裸子植物はマツのようにおばな、めばなが1本の木に分かれて出ているものや、イチョウのように雄株(オスの木)、雌株(メスの木)に分かれているものなどがあって複雑です。

イチョウのオス・メスは、銀杏の実ができてからでないと、判定がほとんど不可能といわれています。銀杏は果肉を含めて全体が種子なので、銀杏の実を落としたイチョウの木がメスの木、母親ということになります。

なぜ被子植物や裸子植物などの種子植物は、受精後まず種子になるのでしょうか。種子は発育を途中でやめた赤ちゃんのような存在で、休眠状態にありますが、芽吹く時期が来ると誰の世話も受けずに、親からもらった種子の中の栄養分からエネルギーを得て発芽します。種子は水や光といった環境条件が適切にならないと発芽しません。これは発芽後の成長を確実にするためです。こうして植物は、なるべく多くの種子をできるだけ広い場所にばらまくことによって子孫を増やそうとします。

種子はまた、タイムカプセルのように長期間生存することも可能です。1951年、2000年間眠っていたハスの種子が発掘され、翌年見事に開花した例(大賀ハス)もあります。作物の種子を人工的に長期保存する研究も行われていて、一般に乾燥と低温が長期保存の必要条件といわれています。

植物の性は複雑ですが、どんな形態であっても、目的は種子をつくることなのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
植物学者・静岡大学教授。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。


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