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イエスはどんな教えを説いたの?【世界の宗教】

Text:星川啓慈

「神や隣人を愛しなさい」ということを説く

キリスト教の本質は、「神の愛」といえます。たとえば、『ルカによる福音書』には、「貧しい人々は、幸いである、神の国はあなたがたのものである。いま飢えている人々は幸いである、あなたがたは満たされている。いま泣いている人々は、幸いである、あなたがたは笑うようになる」という一節があり、「神の愛」を説いています。

前項でお話ししましたが、紀元28年ごろ、イエスはユダヤ教の宣教師ヨハネから洗礼を受けます。厳格な律法主義を特色とするユダヤ教に対して、一種の宗教運動を展開していたのがヨハネだったのですが、イエスは彼からの影響もあって「神の愛」を説く独自の宣教活動を開始したのです。

伝統的なユダヤ教は、「神の正義」を強調します。正義を強調すると、救済されるのは「強者」や「善人」となります。これに対して「弱者」の立場に立ったイエスは、「神の愛」を強調することで、「弱者」や「罪人」にも救済の手を差し伸べ、大きな支持を得ていきます。

イエスの教えをわかりやすくいえば、「神に愛されるように、神を愛しなさい」「自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい」ということになります。つまり、神が愛するように、自分も神を愛することで救いの道が開かれるということです。

ユダヤ教の神が「罰する神」とするならば、キリスト教の神は「許す神」だといえます。「自分がしてもらいたいと思うことを他人にしなさい」という欧米の倫理観は、こうしたバックグラウンドから生まれたといえるのではないでしょうか。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の宗教』
監修:星川啓慈 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1956年生まれ。1984年、筑波大学大学院哲学・思想研究科博士課程単位取得退学。1990年、日本宗教学会賞受賞。現在、大正大学文学部教授。博士(文学)。専門は宗教学・宗教哲学。主な著書に、『言語ゲームとしての宗教』(勁草書房、1997年)、『宗教と〈他〉なるもの』(春秋社、2011年)、『宗教哲学論考』(明石書店、2017年)、『増補 宗教者ウィトゲンシュタイン』(法藏館、2020年)など。


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