大きな鍋になぞらえた巨大な陥没口
よく知られているように、火山の山頂には穴が開いており、それは火口と呼ばれています。火口は火山性の凹地形です。火口よりも大きな、直径が2㎞以上の火山性凹地形のことをカルデラと呼びます。カルデラとは大きな鍋の謂いです。
カルデラ自体は地形的な呼び名ですので、その成因はさまざまです。侵食でできたり、山体崩壊でできたりもします。ですが、大型のカルデラの場合には、大規模な噴火が起きて地下のマグマ溜りからマグマが大量に抜け出すため、その上部の天井が陥没してできた陥没カルデラであることが普通です。巨大な陥没口というわけです。
三宅島火山の2000年噴火のときには、地下のマグマ溜りから水平方向にマグマが逃げ出してしまい、支えを失ったマグマ溜りの天井が崩落しました。その結果、山頂火口付近が1か月半ほどかけてゆっくりと大きく陥没し、目の前で小型のカルデラが生まれる様子をみることができました。
大型のカルデラは北海道周辺と中南部九州にしかみられません。北海道周辺では、摩周、屈斜路、阿寒、支笏、洞爺、十和田などがあります。中南部九州では、阿蘇、加久 藤、小林、姶良 、阿多、鬼界などがあります。現在、そのほとんどは風光明媚な観光地となっています。これらの大型カルデラの大きさは、最大のものでも、長径が30㎞を超えることはありません。
首都圏では箱根カルデラが有名です。箱根カルデラは1回の破局噴火(でできたものではなく、火山灰噴出量10㎦程度の噴火が何回かあってできた小型のカルデラが、その後の侵食によってつながり、さらに広がったものです。最新のカルデラ噴火は6万5000年前ごろに起きており、火砕流は神奈川県をほぼおおい、東京付近も厚さ20㎝余りの東京軽石によっておおわれてしまったことがわかっています。噴出口は、箱根登山鉄道の終点に当たる強羅付近で、地下にはそのときのカルデラが埋没しているのです。
地球上にはとんでもなく大きなカルデラもあります。最大のものはインドネシア・スマトラ島のトバカルデラで、長径が100㎞もあります。また、アメリカ合衆国西部のイエローストーンカルデラは、長径が70㎞ほどあります。それぞれ2800㎦と1000㎦という膨大な量のマグマを噴出したことでできたものです。こうしたカルデラ火山は、スーパーボルケイノと呼ばれています。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
・地球の成り立ちについて興味がある
・地震のメカニズムについて知っておきたい
・今後日本が直面する気候変動について学びたい etc….
以上の方には「図解 地学の話」は大変おすすめな本です。
6400㎞とは何の距離かわかりますか?東京と宇都宮の間の距離が約100㎞ほどですから、その64倍ということになります。また、本州の長さは測り方にもよりますが、約1300㎞ほどですから、その約5倍です。決して短い距離ではありませんが、かなりの長さというわけでもないですね。実は、これは地球の半径の長さなのです。「えっ、地球ってそんなに小さいの!」とびっくりする人もいるかもしれません。そうなのです、地球は本当に小さい惑星なのです。
46億年。一年の46億倍。これはまた、気の遠くなるような時間の長さですが、これは地球の年齢。宇宙の年齢は138億年といわれていますので、それにくらべれば若いとはいえますが、それでも膨大な時間です。長く生きている小さな惑星、それが私たちの地球です。
中学や高校で地学を学んだ方もいるかもしれません。地学は、こうした地球についてさまざまなことを教えてくれます。ですが、地学の分野はきわめて多岐にわたり、そのすべてについて詳しく知ることは、不可能ではないかもしれませんが、大変難しいことです。本書は、地学の種々の分野を体系的に知るための教科書ではありません。49の面白そうなトピックを選び、図解をまじえて、なるべく物語風に語ったものです。
どの項目を読んでも、地学に興味のあるあなたなら楽しめるはずです。ぜひ本書を一読し、その深い世界を楽しんでください。
地球はどのようにして誕生したのか?
この記事では多くの人が一度は疑問に思ったことがある、「地球はどのように誕生したのか?」を解説します。不思議でロマンあふれる地学の世界の一歩を踏みだしましょう。
太陽系は、今から約46億年前にできました。太陽だけではなく、太陽系の惑星も同時にできました。最初は星間ガスの回転濃集から始まり、やがて中心星の太陽とそれを取り巻く円盤が形成されると、円盤の中にガスから固体の塵が晶出しました。その後、それらの塵が相互に合体して、岩石、微惑星、そして惑星や衛星が短期間に形成されました。惑星になれなかった小惑星、隕石、そして月の石の最古年齢は、いずれも46億年前であることから、それが太陽系形成年代とされています。
ですが、地球にはそのような古い記録は残されていません。その理由は、地球では他の惑星にないプレートテクトニクスが働いていて、常に古い岩石を新しいものにつくり替えているからです。地球最古の岩石はカナダ北部でみつかった40億年前のものであり、最古の物質は43 億7000万年前のジルコンという鉱物粒です)。地球年齢が46億歳ということは間接的に推定されているわけです。
多様な隕石の2段階による合体でできた地球
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。ところが、このタイプの隕石には、大気や海水をつくる軽い元素がまったく含まれておらず、エンスタタイト球粒隕石だけでは、現在のような水惑星地球をつくることはできません。地球の大気や海水をつくっている水素の同位体組成(普通の水素の他に重水素と三重水素がある)は別のタイプ(炭素質球粒隕石)が起源であることを示しています。
したがって、地球形成は、岩石/金属からなる部分をつくったエンスタタイト球粒隕石集積の段階と、その後の炭素質球粒隕石の追加という2段階を経てできたことがわかってきました。
太陽系の中を実際に探査機が飛びまわって調べた結果、エンスタタイト球粒隕石は地球軌道周辺にも存在していたと考えられますが、水素などの揮発性成分を持つものは火星の外側の小惑星帯の中でも外側にしか分布していないことがわかりました。であれば、初期太陽系の円盤の中で大規模な物質移動を考える必要があります。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
【書誌情報】
『図解 地学の話』
著者:高橋正樹 他
地学は「地球を対象とする自然科学」の学問。ジャンルが幅広く興味深い話題も多い。地球の誕生から、火山や地震のメカニズム、異常気象や天気図、地層・化石まで、「地球物地学」「火山学」「気象学」「地質学」の4テーマに分けて解説。図解で楽しくわかりやすく勉強になる1冊。
公開日:2023.04.20