ホットスポットの火山とはどんなものか?
19世紀のフランスの小説家ジュール・ヴェルヌの有名な冒険小説に『地底旅行』があります。アイスランドの火山の火口から地下に入った主人公たちが、最後はイタリアのストロンボリ火山の火口からマグマと一緒に飛び出してくるという筋書きです。アイスランドが、氷河におおわれた頻繁に噴火を繰り返す巨大な火山島であることは、ヨーロッパの歴史時代からよく知られていました。
2010年にエイヤフィヤトラヨークトル火山が噴火し、噴煙から大量の火山灰が降下して西ヨーロッパの国々では多くの空港が閉鎖されました。また、1783年から1785年のラキ火山の大規模噴火では、長さ25㎞にもおよぶ長大な割れ目火口から、12㎦もの玄武岩質マグマが流出し、同時に噴出した大量の有毒な火山ガスの影響で多くの家畜が失われ、ヨーロッパに飢饉が発生。アイスランドでは9000人余の犠牲者が出ています。
アイスランドでは、北東から南西に向かって70万年前以降にできた割れ目帯が発達しています。この割れ目帯にはたくさんの火山が噴出しており、ラキ火山のようにしばしば延長が数10㎞に及ぶような、長大な玄武岩質マグマの割れ目噴火が起きます。割れ目は引っ張りの力によってできた裂け目で、ギャオ(図3)と呼ばれています。アイスランドでは、この割れ目帯から東西に離れるほど、時代の古い火山岩が分布しています。
この割れ目帯を大西洋中に追っていくと、大西洋中央海嶺(プレート)に続いています。すなわち、アイスランドは中央海嶺が海面上に姿を現した、珍しい場所なのです。なぜ、アイスランドだけ隆起して海面上に姿を現しているのでしょうか?
アイスランドの地下を地震波で調べると、速度のおそい高温の領域が、中心核付近まで深く続いているのがわかります。これは、高温のマントルプルームの通り道なのです。つまり、アイスランドの隆起の理由は、マントルプルームが上昇して来てホットスポットとなっているためなのです。
アイスランドは、中央海嶺とホットスポットが重なった大変に珍しい場所です。実は、大西洋には海面上には顔を出していませんが、アイスランド以外にも中央海嶺とホットスポットが重なっている場所がいくつかあります。大西洋はパンゲア超大陸が分裂してできたものですが、最初に超大陸の一部を引き裂いて大西洋ができる原因をつくったのは、ホットスポットの並びであったと考えられています。ホットスポットが並んだ線上で分裂が開始され、最後には中央海嶺になったというわけです。ホットスポットとプレートテクトニクスには、意外と密接な関係があった、というわけです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
・地球の成り立ちについて興味がある
・地震のメカニズムについて知っておきたい
・今後日本が直面する気候変動について学びたい etc….
以上の方には「図解 地学の話」は大変おすすめな本です。
6400㎞とは何の距離かわかりますか?東京と宇都宮の間の距離が約100㎞ほどですから、その64倍ということになります。また、本州の長さは測り方にもよりますが、約1300㎞ほどですから、その約5倍です。決して短い距離ではありませんが、かなりの長さというわけでもないですね。実は、これは地球の半径の長さなのです。「えっ、地球ってそんなに小さいの!」とびっくりする人もいるかもしれません。そうなのです、地球は本当に小さい惑星なのです。
46億年。一年の46億倍。これはまた、気の遠くなるような時間の長さですが、これは地球の年齢。宇宙の年齢は138億年といわれていますので、それにくらべれば若いとはいえますが、それでも膨大な時間です。長く生きている小さな惑星、それが私たちの地球です。
中学や高校で地学を学んだ方もいるかもしれません。地学は、こうした地球についてさまざまなことを教えてくれます。ですが、地学の分野はきわめて多岐にわたり、そのすべてについて詳しく知ることは、不可能ではないかもしれませんが、大変難しいことです。本書は、地学の種々の分野を体系的に知るための教科書ではありません。49の面白そうなトピックを選び、図解をまじえて、なるべく物語風に語ったものです。
どの項目を読んでも、地学に興味のあるあなたなら楽しめるはずです。ぜひ本書を一読し、その深い世界を楽しんでください。
地球はどのようにして誕生したのか?
この記事では多くの人が一度は疑問に思ったことがある、「地球はどのように誕生したのか?」を解説します。不思議でロマンあふれる地学の世界の一歩を踏みだしましょう。
太陽系は、今から約46億年前にできました。太陽だけではなく、太陽系の惑星も同時にできました。最初は星間ガスの回転濃集から始まり、やがて中心星の太陽とそれを取り巻く円盤が形成されると、円盤の中にガスから固体の塵が晶出しました。その後、それらの塵が相互に合体して、岩石、微惑星、そして惑星や衛星が短期間に形成されました。惑星になれなかった小惑星、隕石、そして月の石の最古年齢は、いずれも46億年前であることから、それが太陽系形成年代とされています。
ですが、地球にはそのような古い記録は残されていません。その理由は、地球では他の惑星にないプレートテクトニクスが働いていて、常に古い岩石を新しいものにつくり替えているからです。地球最古の岩石はカナダ北部でみつかった40億年前のものであり、最古の物質は43 億7000万年前のジルコンという鉱物粒です)。地球年齢が46億歳ということは間接的に推定されているわけです。
多様な隕石の2段階による合体でできた地球
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。ところが、このタイプの隕石には、大気や海水をつくる軽い元素がまったく含まれておらず、エンスタタイト球粒隕石だけでは、現在のような水惑星地球をつくることはできません。地球の大気や海水をつくっている水素の同位体組成(普通の水素の他に重水素と三重水素がある)は別のタイプ(炭素質球粒隕石)が起源であることを示しています。
したがって、地球形成は、岩石/金属からなる部分をつくったエンスタタイト球粒隕石集積の段階と、その後の炭素質球粒隕石の追加という2段階を経てできたことがわかってきました。
太陽系の中を実際に探査機が飛びまわって調べた結果、エンスタタイト球粒隕石は地球軌道周辺にも存在していたと考えられますが、水素などの揮発性成分を持つものは火星の外側の小惑星帯の中でも外側にしか分布していないことがわかりました。であれば、初期太陽系の円盤の中で大規模な物質移動を考える必要があります。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
【書誌情報】
『図解 地学の話』
著者:高橋正樹 他
地学は「地球を対象とする自然科学」の学問。ジャンルが幅広く興味深い話題も多い。地球の誕生から、火山や地震のメカニズム、異常気象や天気図、地層・化石まで、「地球物地学」「火山学」「気象学」「地質学」の4テーマに分けて解説。図解で楽しくわかりやすく勉強になる1冊。
公開日:2023.04.25