温暖化熱を海水が吸収して膨張し、海面が上昇
地球温暖化に伴い、海面上昇することが懸念されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)では数年おきに世界中の科学者が集まって、科学的な知見を集めた報告書を提出していますが、第5次報告書AR5では、1901年〜2010年までに地球平均海面水位は19㎝上昇したこと、さらに今後約100年(1986年〜2005年の平均に比べた2081年〜2100年の平均)の間に40㎝から63㎝上昇する可能性を指摘しています。
ここで注意しなければならないのは海面上昇の原因です。陸の上にある氷河や氷床などが融ければその水が海に流れ込み、海面が上昇することは容易に想像がつきますが、実際の海面上昇に効いているのはこれだけではなく、むしろ「海水の熱膨張」が重要になります。つまり、地球温暖化による熱を海水が吸収して膨張し、そのために海面が上昇するものです。この効果は、現時点でも陸上の雪氷の融解の効果に匹敵し、今後は最も大きな効果を持つとみられています。
一方、数千年という長い時間スケールでみた場合には、南極氷床の融解の効果は数メートルに及ぶと考えられています。いずれにしても海面上昇の影響は、島の沈没のほか海岸の構築物へかなり大きい影響を与えるとみられています。さて、では温暖化に伴い、海氷はどうなるのでしょうか?
IPCCの報告書では、北極海の海氷面積は最近減少していることが示されています。また、世界の多くの研究機関の気候モデルの予測では、温暖化が急に進むシナリオによると今世紀中に北極海の9月の海氷(9月は例年、最少面積が記録される月)が消失することが示されています(北極海航路が開けるとか、そこの海底資源はどうなるのかという話題も起こりますが)。
氷というのは熱伝導率が悪いため、気象を考える上ではむしろ断熱材とみなします。例えば、冬場の海氷におおわれた領域(多年氷の平均的厚さでも3m強程度しかない)で、海水とその上の大気との熱のやりとりは非常に小さいものですが、一部でも氷がない場所(リードとかポリニャとか呼ばれる)があると、海の熱と水蒸気が大気に輸送され、その領域全体の熱・水蒸気輸送の大半を占めているともみられています。したがって、氷があるかないかは、その上空の大気への熱・水蒸気輸送を変化させ、気候システムに大きな影響を与えることが考えられます。
しかし、雪氷域は一様に減少するのではなく、減少量の地域性・季節性の違いが中緯度各地の天候異常(一時的な低温化なども含めて)を引き起こす可能性が指摘されています。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
・地球の成り立ちについて興味がある
・地震のメカニズムについて知っておきたい
・今後日本が直面する気候変動について学びたい etc….
以上の方には「図解 地学の話」は大変おすすめな本です。
6400㎞とは何の距離かわかりますか?東京と宇都宮の間の距離が約100㎞ほどですから、その64倍ということになります。また、本州の長さは測り方にもよりますが、約1300㎞ほどですから、その約5倍です。決して短い距離ではありませんが、かなりの長さというわけでもないですね。実は、これは地球の半径の長さなのです。「えっ、地球ってそんなに小さいの!」とびっくりする人もいるかもしれません。そうなのです、地球は本当に小さい惑星なのです。
46億年。一年の46億倍。これはまた、気の遠くなるような時間の長さですが、これは地球の年齢。宇宙の年齢は138億年といわれていますので、それにくらべれば若いとはいえますが、それでも膨大な時間です。長く生きている小さな惑星、それが私たちの地球です。
中学や高校で地学を学んだ方もいるかもしれません。地学は、こうした地球についてさまざまなことを教えてくれます。ですが、地学の分野はきわめて多岐にわたり、そのすべてについて詳しく知ることは、不可能ではないかもしれませんが、大変難しいことです。本書は、地学の種々の分野を体系的に知るための教科書ではありません。49の面白そうなトピックを選び、図解をまじえて、なるべく物語風に語ったものです。
どの項目を読んでも、地学に興味のあるあなたなら楽しめるはずです。ぜひ本書を一読し、その深い世界を楽しんでください。
地球はどのようにして誕生したのか?
この記事では多くの人が一度は疑問に思ったことがある、「地球はどのように誕生したのか?」を解説します。不思議でロマンあふれる地学の世界の一歩を踏みだしましょう。
太陽系は、今から約46億年前にできました。太陽だけではなく、太陽系の惑星も同時にできました。最初は星間ガスの回転濃集から始まり、やがて中心星の太陽とそれを取り巻く円盤が形成されると、円盤の中にガスから固体の塵が晶出しました。その後、それらの塵が相互に合体して、岩石、微惑星、そして惑星や衛星が短期間に形成されました。惑星になれなかった小惑星、隕石、そして月の石の最古年齢は、いずれも46億年前であることから、それが太陽系形成年代とされています。
ですが、地球にはそのような古い記録は残されていません。その理由は、地球では他の惑星にないプレートテクトニクスが働いていて、常に古い岩石を新しいものにつくり替えているからです。地球最古の岩石はカナダ北部でみつかった40億年前のものであり、最古の物質は43 億7000万年前のジルコンという鉱物粒です)。地球年齢が46億歳ということは間接的に推定されているわけです。
多様な隕石の2段階による合体でできた地球
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。
地球の岩石の化学成分はよく調べられており、しばしば惑星形成の材料物質であった隕石の組成と比較されます。すると地球岩石は多様な隕石の種類の中でも、特定のタイプ(エンスタタイト球粒隕石)と近縁であることが確認できます。ところが、このタイプの隕石には、大気や海水をつくる軽い元素がまったく含まれておらず、エンスタタイト球粒隕石だけでは、現在のような水惑星地球をつくることはできません。地球の大気や海水をつくっている水素の同位体組成(普通の水素の他に重水素と三重水素がある)は別のタイプ(炭素質球粒隕石)が起源であることを示しています。
したがって、地球形成は、岩石/金属からなる部分をつくったエンスタタイト球粒隕石集積の段階と、その後の炭素質球粒隕石の追加という2段階を経てできたことがわかってきました。
太陽系の中を実際に探査機が飛びまわって調べた結果、エンスタタイト球粒隕石は地球軌道周辺にも存在していたと考えられますが、水素などの揮発性成分を持つものは火星の外側の小惑星帯の中でも外側にしか分布していないことがわかりました。であれば、初期太陽系の円盤の中で大規模な物質移動を考える必要があります。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地学の話』
【書誌情報】
『図解 地学の話』
著者:高橋正樹 他
地学は「地球を対象とする自然科学」の学問。ジャンルが幅広く興味深い話題も多い。地球の誕生から、火山や地震のメカニズム、異常気象や天気図、地層・化石まで、「地球物地学」「火山学」「気象学」「地質学」の4テーマに分けて解説。図解で楽しくわかりやすく勉強になる1冊。
公開日:2023.04.27