太陽からの絶妙な距離が生命をはぐくんだ
現時点で私たち人類が知る限り、地球は全宇宙のなかでたった1つ生命に満ちた天体です。
ここでいう生命とは、知能を持った高等生物に限らず、細菌のような微生物を含みます。
生命の惑星であることの最も重要な条件が、「液体の状態の水がある」こと。
生命が命を維持していくためには、さまざまな化学反応が必要です。液体の水は水素結合と呼ばれる特徴的な性質を備えています。
水素結合には、分子同士を緩やかに結びつける作用があり、生命活動を維持するための化学反応を起こす場となってくれるのです。
太陽系の惑星だけを見てみても、その表面が豊富な水で覆われているのは地球だけ。地球が「水の惑星」と呼ばれるゆえんです。
水は、一気圧では0度から100度の間でしか液体として存在できません。その点地球は太陽とちょうどいい公転軌道半径であるため、この温度条件を備えることができているのです。
地球より少し太陽に近い金星では、太陽に近すぎて表面温度が高温になり液体の水は存在できませんし、地球の外側を公転している火星では、表面の水は凍りついてしまいます。
このように、惑星の表面に液体の水が存在できる領域のことを「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」と呼んでいます。
太陽系での距離を表すとき、地球と太陽との距離(約1億5000万キロメートル)を1天文単位(1au)といいますが、太陽系のハビタブルゾーンは大雑把にいって0.7au(金星の公転軌道)と1.5au(火星の公転軌道)の間にあるといわれています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 宇宙の話』
監修:渡部潤一 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、福島県生まれ。 1983年、東京大学理学部天文学科卒業、1987年、同大学院理学系研究科天文学専門課程博士課程中退。東京大学東京天文台を経て、現在、国立天文台副台長・教授。総合研究大学院大学教授。太陽系天体の 研究のかたわら最新の天文学の成果を講演、執筆などを通してやさしく伝えるなど幅広く活躍している。主な著書は、『最新 惑星入門』(朝日新書)、『面白いほど宇宙がわかる15の言の葉』(小学館101新書)など。
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公開日:2022.03.05