日本の太陽観測衛星によってわかった「磁場の変化」
太陽フレアというのは、太陽表面で起こる爆発現象のことです。その形が火炎(フレア)のように見えることから、こう名づけられました。
爆発の威力は、水素爆弾10万個から1億個と同じくらいだといわれていて、いかに激しい爆発であるかがわかります。
フレアが発生すると、多くのX線、ガンマ線、高エネルギー荷電粒子が宇宙空間に大量に放出されます。
それらが地球に到達すると、地球のバリアである地球磁場が乱されて磁気嵐が発生します。また、電離層にも悪影響を与えて、通信障害を引き起こします。これを「デリンジャー現象」といいます。
実は、美しい天体ショーとして大人気のオーロラも、フレアによって規模が大きくなります。
太陽活動については解明されていないことが多く、フレアの発生も長年謎とされてきました。
その解決の糸口をもたらしたのが、日本のX線太陽観測衛星「ようこう」です。
太陽活動極大期の太陽大気(コロナ)や、そこで起こる太陽フレアなどの高エネルギー現象を高い精度で観測することを目的として、1991年に打ち上げられた観測衛星です。
「ようこう」が世界ではじめて太陽活動の1周期(約11年)をほぼ連続して観測した結果、フレアの発生原因は、コロナで突然起こる磁場の変化であることがわかりました。
磁力線は太陽表面からアーチ状に立ち上がりますが、アーチの間が近接すると、磁力線のつなぎ替えによって磁場に蓄えられたエネルギーが瞬時に開放され、爆発します。
この爆発こそがフレアなのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 宇宙の話』
監修:渡部潤一 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1960年、福島県生まれ。 1983年、東京大学理学部天文学科卒業、1987年、同大学院理学系研究科天文学専門課程博士課程中退。東京大学東京天文台を経て、現在、国立天文台副台長・教授。総合研究大学院大学教授。太陽系天体の 研究のかたわら最新の天文学の成果を講演、執筆などを通してやさしく伝えるなど幅広く活躍している。主な著書は、『最新 惑星入門』(朝日新書)、『面白いほど宇宙がわかる15の言の葉』(小学館101新書)など。
地球は宇宙のどこにあるの? 太陽が巨大化するってホント? 宇宙はいくつもあるの? 素朴なギモンに即答.。宇宙のナゾに迫る! 地球の生い立ちから、お隣の天体・月の謎、太陽と惑星の素顔、恒星と銀河、宇宙論まで、最新の天文学、宇宙物理学、惑星科学に踏まえてやさしく解説。豊富なイラスト、約50のテーマで、夢とロマンに満ちた、いちばん新しい宇宙の姿がよくわかります。太陽系のナゾから最新の宇宙理論まで、宇宙のフシギをズバリ解明します!
公開日:2022.03.21