赤ちゃんの産声は、自力呼吸を始めた証
お母さんのお腹の中にいる胎児は、子宮の内側にある胎盤から臍帯(へその緒)の中の臍静脈を通して酸素と栄養をもらっています。このとき、肺は羊水で満たされているため、呼吸はしていません。
ところが、生まれてお腹の外に出ると、へその緒が切られて酸素を取り込むことができなくなってしまいます。そこで赤ちゃんは、空気を吸い込んで肺呼吸を始めます。
心臓に腫瘍ができにくい理由には、いくつかの説があります。ひとつは、心臓の特異性によるものです。
とはいえ、いきなり肺を膨らませるためには、大きな力が必要です。そのため、精一杯の力で肺に空気を入れて息を吐き出しながら泣くことが大きな産声(第一啼泣)となるのです。
つまり、赤ちゃんの産声は〝初めての呼吸〟であり、それまで使っていなかった肺を使い、肺呼吸を始めた証でもあるのです。
このように、赤ちゃんがいきなり肺呼吸に切り替えられるのは、お腹の中で練習をしているからです。胎児は、妊娠28週ごろから羊水を飲んで肺を膨らませては吐き出して、呼吸の練習(呼吸様運動)を始めます。そして、へその緒が切られて酸素不足の状態になり、血中の二酸化炭素の濃度が高まると、脳幹で呼吸反射が起きて肺呼吸を始めます。
呼吸を始めることで肺の中を流れる血液も増え、徐々に血液中の酸素濃度も上がって皮膚がピンク色に染まっていくのです。
また、「赤ちゃんは泣くのが仕事」といわれるくらいよく泣きますが、生後2〜3カ月の赤ちゃんは、泣いていても涙は出ていません。これは、まだ涙腺が発達しておらず、脳も発達していないためです。〝寂しい〟〝悲しい〟などの感情によって泣くことはありませんが、唯一のコミュニケーション方法である泣き声を使って、お腹が減ったことや眠いことをお母さんに知らせているのです。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
【書誌情報】
『図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志
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公開日:2021.10.24