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自閉スペクトラム症(ASD)の特徴と対応①~さまざまな苦手なこと~【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】

Text:湯汲英史

雰囲気を感じとることが苦手

社会生活を送るうえで「空気を読む」「雰囲気を察する」ことを求められる場面は意外と多くあるものですが、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ子どもは、そうした「雰囲気を察知する」ことがどちらかといえば苦手です。マイペースな性格と軽く考えてしまいがちですが、実際は脳の機能障害によるもの。自分の振る舞いにより、相手がどう感じるかというところまで想像することができないのです。

表情から読みとるのが苦手

目の前の相手が悲しんでいたり、イライラしたりしていても、まったく気にする素振りもなく平然としている。あるいは感情を逆なでするような言動で相手を怒らせてしまう。こうした相手の表情を読みとることができないのもASDに多い傾向のひとつです。表情だけでなく、身振りや手振り、声のトーン、視線などの複数
の感情表現を加えて、少し大げさに表現しても読みとることができない場合があります。

考え方を柔軟に変えることが苦手

ASDの特性を持つ子どもは、状況に応じて自身の振る舞いを柔軟に変えることが上手にできません。場の雰囲気や相手の表情を読むのが苦手だからです。まったく知らない人に馴れ馴れしくしてしまったり、人前では話しづらいようなセンシティブな話題を振ってみたりと、自分が興味を持ったことは遠慮なく口にしてしまいます。悪意のない言葉が相手を傷つけてしまうことも多いので困りものです。

<C O L U M N>

家族が見た発達障害①(Yさん・40代女性)運転見合わせで大パニック

家族で出かけていたある日のこと。目的地に向かっている電車が事故のため途中で運行をとりやめてしまった。毎日通勤や通学をしている人にとってはよくあることだが、発達障害のある息子にとっては「いつも同じ時間に、同じ目的地に着くのが電車」と思っていたらしく、突然の出来事にパニックを起こしてしまった。そのときは何とかなだめておさまったものの、以降は外出する際にはいろいろなルートを通るようにして、ルートにはいくつもの選択肢があることを教えるようにしていった。すると、乗り換えルートを探すことに興味を持つようになり、今では電車だけにとどまらず、バスの乗り換えなども駆使して通学ルートを楽しむようになっている。

【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし)  日本文芸社刊

監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。


<この一冊で発達障害の最新事情と正しい知識がわかる!>ここ13年で10倍に増えたとされる「発達障害」。昨今はADHDやアスペルガーといったワードが一般の人たちにも普及したことにより、病院への受診率が増え、自分や子ども、家族に対して発達障害かも、と感じる人たちが増えている印象です。特に近年、「グレーゾーン」や「気になる子」といった発達障害かもしれない人や子どものことをさす用語も一般的に浸透するほど、関心の高いテーマになっています。そんな発達障害について知りたい人に向け、発達障害の正しい知識や最新の情報から、周りのサポート法、対処法を図解とイラストでわかりやすく解説します。本人が気にしている、周りの人も気になるような発達障害の人の言動について、本人はどう考えてそのような行動をとったり、発言したりしているのかなど、物事を考える背景や手順を解説した上で、本人ができる対処法やそれに対する周りのサポート法、心構えを実例も交えて具体的に紹介します。発達障害かもしれないと思っている当事者、知人友人恋人など周囲の人が発達障害かもしれないと思っている人、自分の子どもが発達障害かもしれないと思っている親など、発達障害の知識を広げたい、理解したいと考えている方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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