左腕は体と一体となってクラブを上げていく
【部位】左肩 【機能】左腕でリードする
腕の動きは上げ下げ左右、ねじりなど
肩関節は、肩甲骨と一緒になって腕の動きをつくっています。腕の主な動きは上げ下げです。前を通して上げ下げする動きと、ヨコを通して上げ下げする動きがあります。さらに、腕を前に上げた状態から左右に動かす動きや、腕の付け根から腕をひねる動きもできます。クラブを上げ下ろしする際、腕はどれほど上げ下げしているのでしょうか。また、腕はどのくらい振っているのでしょう。クラブを振るために腕をどう動かしているのか、見てみましょう。
胸に対して左腕を30度振る
腕を前に水平に上げて横に動かす動きがあります。左腕についてのこの動きをギアーズではとくに「リード・アーム・アダクション」として測定しています。胸と左腕でできる角度の変化を見てみましょう。P1で84度、P2で87度とほぼ変わりません。つまり「左サイド(の体幹と腕)をワンピースにして(一体化して)」始動しています。90度より少し小さいので、手の位置は胸の正面のやや左側にあるということになります。そこから、P4で61度まで狭まっていきます。手の位置が右にズレているのです。P5でも60度とほぼ同じ角度を保っています。
切り返しの動きの中で、左腕が胸にくっつくくらいに三角形がつぶれてしまうことをボールが捕まらない理由やヘッドスピードが上がらない理由に挙げる人もいます。いったんつぶれた三角形は元に戻していかないといけないのです。しかし、力で元に戻そうとしなくても、左に側屈し左肩甲骨を下げておくことである程度以上、この角度がつくことはなくなります。P5以降はこの角度は広がっていきます。P6で89度、P7で87度。つまりアドレスのときとほぼ変わらない角度になるわけです。さらにP8で87度、P9で87度と変わりません。P6以降、この角度がほとんど変わらないということは、やはり左腕が胴体とワンピースになって動いているということでしょう。
「腕が体を追い越す」意識は、振っている側からするとあると思いますが、腕が体の正面を通り過ぎ、文字通り追い越すほどには振られていないのです。胴体に対しての腕の動きを「腕のスイング」とするならば、その振幅の大きさは、切り返しのときに約60度から約90度まで、30度ほど動いて、アドレスの状態に戻るという程度だと理解してください。
左腕が正しく動けば右腕はついてくる
リードする側である左肩の動きについてはデータをとっているギアーズですが、右肩についての同じ項目はありません。スイングをチェックする際、左腕の動きは重要と考えられているのに対し、右腕についてはとくに必要性が認められていないのです。つまり、左腕のリードに、右はついていくだけであり、左腕の動きを直せば、右の動きもよくなると考えられているということだと思います。
●リード・アーム・アダクション
胸と腕の角度はPGAツアープロの平均で30度弱。手の位置で言うと、胸の右の正面から、左の正面までをしっかりと振る必要がある。
出典:『ゴルフ当たる!飛ばせる!スウィング解剖図鑑 イラストでわかる身体とクラブの正確な使い方』著/奥嶋誠昭
【レッスンプロ情報】
●奥嶋誠昭
1980年生まれ。ツアープロコーチ。アマチュアゴルファーからツアープロまで最先端機器を使ったバイオメカニクス(動作のコツを解析する)をもとに、ゴルファーの要望に合ったスイングづくりに定評がある。JGTOツアープレーヤー。2020―2021年国内女子ツアー賞金王、東京五輪銀メダリストの稲見萌寧など、数多くのトッププロ選手の指導実績を持つ。
【書誌情報】
『ゴルフ 当たる! 飛ばせる!スウィング解剖図鑑 イラストでわかる身体とクラブの正確な使い方』
著者:奥嶋誠昭
スウィングづくりやスウィングレッスンをテーマとする多くのゴルフ書は、写真、動画などの映像を使ってスウィング時の身体の動きを解説する。
その見せ方では、手や足、身体の動きや動かし方は表現できても、例えば「インパクトを感じる手の感覚」「インパクト時の足の感覚」といった、スウィング時の身体が感じる感覚までは伝えづらい。そこで本書では、スウィングで体感する手や足の感覚をイラストでできる限り具体化し、読者にその感覚をつかんでもらい、スウィングづくりの向上を目指す。著者は、スウィングの解析システムを駆使し、プロ、アマ問わず多くのゴルファーのスウィングを分析している奥嶋誠昭プロ。同プロ独自のスウィング動作をイラストを通して解剖、図解化し、ゴルフスウィングの上達に役立てる。
公開日:2024.01.12