打球を意図的に曲げるときの理論①
クラブパスとフェースの向きのズレがボールの回転軸を傾ける
サイドスピンとバックスピンは一体
打球を曲げることについては、科学的に答えが出ています。Dプレーンの理論によって「(新)飛球法則」として、シンプルなメカニズムとして説明されているとおり、弾道の打ち分けは可能なのです。ここではボールが曲がるということについて簡単に説明していきます。従来はスイングプレーンの向きとフェースの向きの関係で打球方向と曲がり方が説明されてきましたが、スイングプレーンではなく、ボールに当たるときのクラブの動き方(クラブパス)が関係しているということです。
つまり、アウトサイド・インのスイングプレーンにも、インサイド・アウトのスイングプレーンにも、クラブがインからアウトに向かう動きもあれば、アウトからインに向かう動きもあるということ。だから、スイングプレーン自体はアウトサイド・インでもインサイド・アウトでも、ドローもフェードも両方打てるのです。Dプレーンとは、このクラブパスのラインとフェースが向いている方向のラインがつくる平面のこと。このDプレーンに対し、ボールの回転軸は直角になります。具体的に説明しましょう。
ドライバーでは約85%、アイアンでは約75%の割合で、インパクトのときのフェースの向きにボールは飛び出していきます。そして、そのフェースの向きと、クラブパスのズレ(=Dプレーンの傾き)によってボールに回転がつきます。もし、フェースの向きがターゲットに真っすぐ、クラブパスもターゲットに真っすぐなら、Dプレーンはターゲットライン上の垂直な平面になるため、ボールの回転軸は水平で、右にも左にも曲がらないストレート弾道になります。それに対して、クラブパスの向きよりも、フェースが右を向いているとすると、Dプレーンは右に傾くため、ボールの回転軸も右が低くなります。そうすると打球は右に曲がっていきます。
逆に、クラブパスの向きよりもフェースが左を向いていると、Dプレーンは左に傾き、ボールの回転軸としては左が低くなるため、左に曲がる打球になるのです。これは、水平方向で考えるとボールの打ち出し方向とヨコへの曲がり方の法則になりますが、垂直方向で考えれば、ボールの打ち出し方向とタテ方向への曲がり方(フケ上がるか棒球、ドロップか。つまりバックスピン量)の関係の法則となっています。要は、ボールの回転については、バックスピンとサイドスピンが別々にあるわけではなく、ひとつの回転がヨコ方向とタテ方向両方に影響を与えているということの説明にもなっているのです。
クラブパスの向きとフェースの向きのズレによって、Dプレーンに傾きが生まれる。この傾きに応じてボールが回転する。このイラストの場合、回転軸はターゲットに向かって右が低くなっているので、右に曲がる。
出典:『ゴルフ当たる!飛ばせる!スウィング解剖図鑑 イラストでわかる身体とクラブの正確な使い方』著/奥嶋誠昭
【レッスンプロ情報】
●奥嶋誠昭
1980年生まれ。ツアープロコーチ。アマチュアゴルファーからツアープロまで最先端機器を使ったバイオメカニクス(動作のコツを解析する)をもとに、ゴルファーの要望に合ったスイングづくりに定評がある。JGTOツアープレーヤー。2020―2021年国内女子ツアー賞金王、東京五輪銀メダリストの稲見萌寧など、数多くのトッププロ選手の指導実績を持つ。
【書誌情報】
『ゴルフ 当たる! 飛ばせる!スウィング解剖図鑑 イラストでわかる身体とクラブの正確な使い方』
著者:奥嶋誠昭
スウィングづくりやスウィングレッスンをテーマとする多くのゴルフ書は、写真、動画などの映像を使ってスウィング時の身体の動きを解説する。
その見せ方では、手や足、身体の動きや動かし方は表現できても、例えば「インパクトを感じる手の感覚」「インパクト時の足の感覚」といった、スウィング時の身体が感じる感覚までは伝えづらい。そこで本書では、スウィングで体感する手や足の感覚をイラストでできる限り具体化し、読者にその感覚をつかんでもらい、スウィングづくりの向上を目指す。著者は、スウィングの解析システムを駆使し、プロ、アマ問わず多くのゴルファーのスウィングを分析している奥嶋誠昭プロ。同プロ独自のスウィング動作をイラストを通して解剖、図解化し、ゴルフスウィングの上達に役立てる。
公開日:2024.04.09