課題を解決するには保護者の協力が必要不可欠
保護者の協力を得ることが解決の近道
そもそも、気になる子の課題について考えるとき、保護者と協働する必要があるのはなぜなのでしょうか。それは、家庭での養育環境が子どもの心身に影響を与え、ひいては気になる言動にも大きく関わってくるからです。
特に、子どもは生理的な状態によって言動を左右されやすいもの。例えば、睡眠や食事といった基本的な欲求が満たされない子どもは、園でもぐずったり不機嫌になりやすい傾向があります。こうした生活リズムの安定について解決を図るには、保護者の協力が必要不可欠といえるでしょう。
また、保護者自身が子どもとうまく関われておらず、愛着関係が適切に形成できていないといったケースも考えられます。こうした場合も、園で子どもによりよい関わりを提供するだけでなく、保護者に子育てのヒントを伝えるような働きかけをすることが、課題への近道になります。
養育環境に関するアドバイスの注意点
保護者に協力を求める際は、問題点の分析・解決ばかりを急ぎすぎないよう注意が必要です。うまくいかない現実に直面している保護者にいきなり正論をぶつけても、改善は見込めないかもしれません。
「忙しくて子どもに関わる時間が減ってしまった」「仕事の都合で夜が遅くなりやすい」など、まずは相手の状況をあるがままに受け止めることを意識しましょう。「大変だったのですね」「お母さん、頑張っていますね」といったいたわりの言葉をかけることで、生活改善などについての話し合いもスムーズに進みやすくなります。
また、こうした保育園の姿勢が、保護者から次の言葉を引き出すことにつながり、とり詳しい情報を基にした適切なアドバイスがしやすくなるという側面もあるでしょう。まずは相手の状況に共感する姿勢を示し、それから問題点の分析やアドバイスに入るという手順を忘れないようにしましょう。
まずは相手に「共感」→その後に問題点の分析・アドバイス
〈一例〉
生活リズムが乱れている場合
→睡眠の重要性や理想的な就寝時刻、しっかりと眠るための環境づくり(例:就寝前にテレビなどの画面を見せない、眠る前のルーティンを決める)について伝える
子どもに関われる時間が短い場合
→今まさに園で子どもが楽しんでいることを伝えて、家でよりよいコミュニケーションが取れるようなヒントを提示する
【出典】『発達障害の専門家が教える 保育で役立つ気になる子のサポートBOOK』著:湯汲英史
【書籍情報】
『発達障害の専門家が教える 保育で役立つ気になる子のサポートBOOK』
著:湯汲英史
幼稚園や保育園で言葉や行動や少し「気になる子」はいませんか?落ち着きがない、ずっとボーっとしている、「わからない」が多く、会話が成り立たない、すぐウソをつく、他の子や保育者をベタベタ触る……など。そのような気になる行動や言葉を発する子どもたちのサポート法を多数の声かけ例とともに丁寧に解説。また、「気になる子」の周りの子どもたちにも焦点をあて、周りの子どもたちや親御さんへのフォローや対応策のほかにクラス全体が過ごしやすくなる環境づくりのアイデアを提案します。そのほか、園でのスムーズな連携の仕方や有効的な記録の取り方など、今すぐ実践したい保育で役立つ情報を豊富に収録。保育学生さんや新米保育士さんだけでなく、改めて「気になる子」のサポートについて考えたいベテラン保育士さんなど多くの方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。
公開日:2024.06.28