両親が離婚しても保障される子どもの相続権
親が離婚しても子どもには相続権が残る
夫婦が離婚すると、配偶者の相続権はなくなりますが、子どもが両親の相続権を失うことはありません。たとえ一方の親と別居をしていても、戸籍が別であっても、親子である事実は変わらないからです。
親が再婚した場合
子どもと離れて暮らす親が再婚して新たに子どもが生まれても、前の配偶者との間にできた子どもの相続権がなくなることはありません。どちらの子どもにも相続分があり、同等に分けられます。
子どもと一緒に暮らす親が再婚した場合も、実両親の財産を継ぐ相続権がなくなることはありません。
一方、子どもと再婚相手との間には血縁関係がないため、子どもは再婚相手の財産を相続する権利はありません。
再婚相手の財産を相続させたい場合は、養子縁組を結び、法律上の親子になる必要があります。
マイナスの財産が多い場合
財産には預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。相続する際は、子どもであってもマイナスの財産も引き継ぐことになります。プラスの財産よりマイナスの財産が多いときは、相続が開始したことを知ったとき(通常は親の死亡日)から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を申し立てることもできます。
ポイント
- 両親が離婚しても、再婚しても、子どもの相続権、法定上の相続割合は守られる。
- 再婚相手に対する相続権は、養子縁組をすることが条件となる。
子どもの相続権と相続分を確認しよう!
法律で決められた相続の割合(法定相続分)
【法律で決められた相続の割合(法定相続分)】
- 配偶者と子1人→配偶者1/2、子1/2
- 配偶者と子2人→配偶者1/2、子1/4ずつ
- 子1人のみ→全部
- 子2人のみ→子1/2ずつ
親の再婚と子どもの相続
【ケース1:離れて暮らす父親が再婚して子が生まれた場合】
- 父が亡くなった場合、再婚相手1/2、子Aと子B1/4ずつ
- 母が亡くなった場合、子A全部
【ケース2:一緒に暮らす母親が再婚して子が生まれた場合】
- 母が亡くなった場合、再婚相手1/2、子Aと子B1/4ずつ
- 再婚相手が亡くなった場合、母1/2、子 B1/2
【ケース3:離れて暮らす父親が「再婚相手にすべての財産を相続させる」 という遺言書を残して死亡した場合】
- 遺言があっても、子は法定相続分の 1/2 をもらうことができる(遺留分)。つまり、法定相続分 1/2×1/2 = 1/4 が相続分となる。再婚相手 3/4、 子 1/4
【押さえておこう!】「ケース3」の場合、遺留分を取り戻すには、遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)を行います。遺留分減殺請求の方法に決まりはありませんが、1年以内に請求する必要があり、相続した人に内容証明郵便を送って意思表示をしてから、話し合い、調停、裁判を行うのが一般的です。
【出典】『増補改訂版 前向き離婚の教科書』著:森元みのり
【書籍情報】
『増補改訂版 前向き離婚の教科書』
著:森元みのり
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公開日:2024.06.22