人々に影響を与えた経済学者③:ジョン・メイナード・ケインズ
1883年~1946年:減税や公共投資で公共需要を創出することが不況克服につながると提唱
不況からの脱却は、政府の介入なしに達成することはできない!
1929年10月24日は「暗黒の木曜日」と呼ばれます。この日に世界恐慌の発端となるニューヨーク・ウォール街で株価の大暴落が起きたからです。ダウ平均株価はここから2年8カ月に底値を付けるまで89%も下落し、元の水準に戻るまで25年を要します。
当日の米国フーバー大統領(在任1929年~33年)は、古典派経済学の教えに従い、「放っておいてもそのうち景気は回復する」と楽観視し、政府の介入を最小限としたため、恐慌は深化し世界中に波及します。
米国の失業率は2割強に達し、世界の貿易額は5割減少し、各国は経済ブロック化をするため、第二次世界大戦(1939年~45年)の地下が作られていったのです。
【有効需要の原理】「企業」テレビを100台生産→←テレビが100台必要「消費者」
有効需要(人々の欲望)を創出しなければ不況から脱却できない!
1936年、イギリスの経済学者ケインズは『雇用・利子および貨幣の一般理論』を著して、不況克服の指針を示しました。従来の古典派経済学が、供給面から捉えられたのに対し、ケインズは人々の欲望である「有効需要」を創出しなければ、不況脱出が難しいことを説いたのです。
恐慌に手を焼いていたルーズベルト大統領(在任1933年~45年)は、この考えに影響を受けて、政府が市場経済に積極介入する大規模公共事業などを行い、雇用に拡大を図りました(ニューディール政策)。
ケインズは、市場メカニズムだけでは有効需要が不足するので投資の増加で所有の増加をもたらす乗数理論を用い、減税や公共投資で「有効需要」を創出しようと考えたのです。
つまり、不況克服は市場の自由に任せるだけでは駄目という、こうした主張が「小さな政府」から「大きな政府」への流れを作り、今日では古典派経済学とケインズ経済学はともに融合し合い、経済に貢献しています。
【小さな政府】経済活動に極力政府は介入しない(例:社会保障制度を民間にまかせる)→大きな格差が生まれてしまう
【大きな政府】経済活動に政府が介入する(例:医療費など個人負担を軽減する)→格差を是正することができる
【ケインズの主張】
- 市場の自由に任せるだけでは不況は克服できない
- 小さな政府から大きな政府への流れを作る
アダム・スミスが提唱した「神の見えざる手」の弱点を指摘し、やがて古典派経済学とケインズ経済学の融合により経済は発展することになります。
【出典】『眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話』著:神樹兵輔
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話』
著:神樹兵輔
経済社会は「価値の尺度」と「交換」に基づき、私たちの日常生活に大きな影響を与えています。歴史的に見れば、江戸時代の日本では貨幣経済が発展し、物々交換から現金取引への移行が進み、一方でアメリカは金融政策や税制改革を通じて市場の豊かさを維持しました。近年では目的に基づいた合理的な行動が新たな価値を生み出す一方で、非合理的な選択も経済に影響を及ぼしています。「眠れなくなるほど面白い図解プレミアム経済の話」では、こうした経済社会のカラクリを解き明かし、市場の豊かさや人々の価値観がどのように形成され、どのように経済活動に影響を与えるのかを探り、この知識を通じて読者が豊かで充実した生活を送る方法を見つける手助けを目指します。
公開日:2024.08.26