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MLBでは一般公開されているトラッキングデータが日本プロ野球では公開されていない理由とは!?

Text:大利実

プロ野球“最新トレンド”とは?

「トラックマン」や「バレルゾーン」、「フライボール革命」といった言葉をご存じだろうか?近年、野球界ではMLBを中心に大きな変革が起きている。最新のテクノロジーを駆使して野球のプレーを数値化、データ化することで見えてきた“球界の最新トレンド”とは? メジャーリーガーやプロ野球選手などをサポートしている株式会社ネクストベース・アナリストの森本崚太さんに話を聞いた。

リーグで一括管理のMLB球団が契約するNPB

――MLBで取り入れられているトラッキングシステムは、NPBでも導入されています。しかし、データが表に出てくることはありません。両者の違いはどこにあるのでしょうか。

森本 運営方法に大きな違いがあります。MLBは機構側が一括管理するやり方で、2014年からトラックマン、2020年からはホークアイを導入しています。取得した膨大なデータは、『Baseball Savant』というサイトで一般に公開され、誰でも見ることが可能です。そこには、野球の新たな楽しみ方を提供し、新しい野球ファンを創出しようとする狙いがあるのです。

――一方のNPBは……。

森本 現在、広島を除く11球団にトラッキングシステムが導入されています。ただし、MLBとの大きな違いは、球団ごとに契約していることです。そのため、取得データが表に出てくることはなかなかありません。

――球界のレベルアップを考えたら、公開したほうがいいものでしょうか。

森本 もちろんそう思います。公開されることで、新たな分析方法が考えられ、それが球界全体のためになっていくものです。

――数年前はトラックマンが主流だったと思いますが、今はホークアイをよく耳にするようになりました。どこに違いがあるのでしょうか。

森本 トラックマンはレーダー、ホークアイはカメラでの撮影という違いがあります。カメラで撮ることによって、映像を記録、蓄積し、分析できるのが最大の利点です。撮影スピードなど課題も多く、実装には至っていないようですが、映像から選手のフォームを分析することで、障害予防やパフォーマンスアップにつなげる研究が盛んに行われています。

――データや映像を読み取る専門家がまだ少ないと聞いたことがありますが、「アナリスト」という職種に興味を持つ人材がこれから増えてくるのではないでしょうか。

森本 MLBではアナリストとコーチの間に入る「データコーディネーター」や、映像分析を中心に行う「ビデオコーディネーター」など、役割が細分化されています。NPBの場合は、これらの仕事をひとりで全てやっている球団が多いのが現状です。

――予算との兼ね合いも当然あるのでしょうね。

森本 NPBの中にも新たな動きはあります。2年ほど前に、ソフトバンクはフォームを分析できるバイオメカニストを公募していました。研究実績も多い専門家が採用されています。

――今後はビッグデータをいかに分析し、現場に活用するかがカギになるでしょうか。

森本 そうなってくると思います。今、データに興味を示す選手は間違いなく増えています。特に「スマホ世代」の若手は、データが身近にあるのが当たり前ですからね。

――そう考えると、5年後、10年後にはまた違うトレンドが生まれている可能性がありますね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

【PROFILE】森本崚太(もりもと・りょうた)1992年10月18日生まれ、東京都出身。國學院久我山時代はエースとして活躍。現在は株式会社ネクストベースのトップアナリストとして、トラッキングデータをはじめとした野球データの解析を担当している。侍ジャパン社会人代表ほか、プロ・アマ問わず数多くの投手の球質測定やピッチデザインも行っている。8月27日には初の著書『野球データ革命』を出版した。

出典:『がっつり! プロ野球(29)』

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