SPORTS COLUMN
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ぎりぎりをしのぎ続けて一流選手へ

Text:遠藤玲奈

【元中日ドラゴンズ/読売ジャイアンツ 井端弘和さんトークショー】

一見、野球と関係のない話から始めることをお許しください。教育学専攻だった私がスルーするわけにはいけないという個人的な意地もありますが、井端弘和さんの人となりに大きく関係することは間違いありません。

「学生時代のお話になった時、勉強はそれほどできなかった」例えば方程式でXやYが出てくると、「なぜXとYなのか、他の文字ではいけないのかと気になってしまって先に進めなかった」とおっしゃっていました。

私自身はそんなことを考えたこともなかったので、少し調べてみました。本来は参考文献を読むべきところですが、信憑性が高くおもしろい結論がWebサイトから得られました。X, Yの起源は、諸説あってよくわからないのだそうです。下記のサイトでは、アラビア語で「未知数」を表す言葉が、古代ギリシャ語、ラテン語と転じて「X」になったという説が詳しく述べられていました。書物に現れるのは、デカルトの著作が最初だそうです。「我思う、ゆえに我あり」のデカルト。

こんなところに疑問をもつ井端少年は、勉強ができなかったというより、少々賢すぎたのでしょう。数学者や哲学者になる道も、ひょっとしたらありえたのかもしれません。


ですがそれらではなく、またお父様が積極的に勧めたという競輪選手でもなく、井端さんが定めた目標はプロ野球選手でした。亜細亜大学野球部に所属していた時に東都リーグへの注目が高まり、プロ入りの道が具体的に見えてきました。どの球団でもいい、とにかくプロに、との強い思いが通じ、中日ドラゴンズから5位指名を受けます。

入団して驚いたのは、ショートが11人いたこと。レギュラーの座をつかむのは簡単ではありません。守備には自信があったはずでしたが、先輩の久慈照嘉さんのプレーに衝撃を受けます。捕って握り変えるのではなく、捕った瞬間右手に握っているような、という表現は、本格的な試合をしたことのない私にもとてもわかりやすかったです。

丸坊主、レフトでの出場、松坂投手からのバント

プロ2年目のシーズンは、一軍昇格が叶いませんでした。戦力外通告のおそれを振り払うように丸坊主で臨んだ春季キャンプ、それに続くオープン戦は、実りあるものとなりました。とはいえそれは、さまざまな“ぎりぎり”がよい方に転んだ結果でした。たまたま空いたレフトを、ほとんど経験がないのに守った。松坂大輔投手の直球を待っていたらスライダーが来て、絶妙なバントができた。努力と幸運が重なり、開幕を一軍で迎えます。当時の監督、星野仙一さんの隣で試合を見ていてわかったのは「どういうプレーをしたら怒るのか」。最高の教科書ですが、その機会を活用して冷静に学んでいた若手時代の井端さんの度胸もたいしたものです。初めてのスタメン出場はなぜかライトだったそうですが、その後のご活躍はドラゴンズファン、井端ファンのよく知るところです。


”アライバ”コンビの仲は・・・

紙幅の残りで、ファンの皆様にご安心いただきましょう。“アライバ”は、決して仲が悪いわけではないそうです。多くを話さなくても当然のように通じ合う関係。公私、同性異性を問わず、そんな相手に出会いたいものです。月並みな表現ですが、そのためにはやはり自分を磨き、高めることが大事なのだと改めて感じました。自分がなすべきことを正しく認識し、うまくやれるようにこつこつと繰り返し、ここぞという時に腹をくくって思いきって動く。人生の方程式の解は、井端イズムで導くことができそうです。


【出典】
GIZMODO「なぜ方程式で未知数はXなの?」
※2019年4月23日閲覧
https://www.gizmodo.jp/2014/11/x_20.html

『ラブすぽ』ライター:遠藤玲奈
池田高校のやまびこ打線全盛期に徳島に生まれる。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。選手としての経験はないが、独自の方法で野球の奥深さを追究する。特に気になるポジションは捕手。フルマラソンの自己ベストは3時間31分。