SPORTS COLUMN
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プロ野球CS下剋上の歴史

Text:小川隆行

2017DeNA冴えたラミレス采配

パ・リーグで2004年に実施され、セ・リーグでも07年から導入されたクライマックスシリーズ。昨年までの14年間で、2位以下のチームが勝ち進み日本シリーズに進出したのは左ページの通り6例ある。

 記憶に新しいのが2017年のDeNAだ。ペナントレースで88勝51敗、勝率・633と2位阪神に10ゲーム差をつけた広島カープに4連勝。首位から14・5ゲーム差をつけられながらの日本シリーズ進出という「過去最大の下剋上」を成し遂げた。

 伏線は8月後半にあった。22日からの3連戦で、DeNAはカープに3夜連続でサヨナラ勝ちを果たした。球団史上57年ぶりの快挙だったが、この3連戦で、DeNAはカープに対して「接戦なら負けない」と自信めいたものを持った気がする。独走のカープに唯一勝ち越していた(13勝12敗)のも強みだった。

 両チーム1勝1敗で迎えたCS第3戦。先発の井納翔一はレギュラーシーズン6勝10敗だったが、前年のCS(巨人戦・広島戦)とも先発で好投しており、ラミレス監督は短期決戦での勝負強さに賭けた。2回に先制タイムリーを放った井納は5回を無失点に抑え、迎えた6回。連打を浴びたところで三上朋也と交代した。その理由は、次の打者であるバティスタが「2、3打席目に対応してくる打者」(ラミレス監督)であるため。
三上がバティスタをセカンドフライに打ち取ると、次の松山竜平には砂田毅樹を、エルドレッドには須田とつなぎ結局は無失点。7回以降はエスコバー、パットン、そして守護神の山﨑康晃と7人での完封勝利を達成。この試合からラミレス監督の采配が冴えてきた。
翌第4戦もリリーフ経験のない今永昇太を1点リードの7回に投入。すると2番から始まる好打順を3人で抑え、続く8回もイニングまたぎで0封。この2戦で流れをつかんだDeNAが、第5戦を9対3と勝利して史上2度目となるシーズン3位からのシリーズ進出を決めた。

シーズン2位以下からの日本シリーズ出場

07年中日:チームも選手も下剋上

 なお、この結果にCSの存在そのものを見直す声も続出した。シーズン終盤の消化試合を減らす、という意味では大いに成功と言えるが、やはり優勝の重みが消えることは否定できない。個人的には「首位(2位)から5ゲーム以内」などの進出条件を決めたほういいような気もする。

 07年の中日は優勝の巨人とわずか1・5ゲーム差だった。阪神に連勝してセカンドステージに駒を進めたが、先発予定の山井が右肩痛を発症。落合監督は左腕の小笠原孝を先発起用した。右投手を予想した巨人は、4点リードを許した後、チャンスで左の清水隆行・脇谷亮太に代打を送るなど早めの交代で控え選手を使ってしまい、後半の選手起用における選択肢を狭めてしまった。これで流れをつかんだ中日は第2・3戦を連勝、セ・リーグ初の下剋上を達成した。

 この年の下剋上はチームだけではなかった。キャンプイン直前に中日に入団した中村紀洋は背番号205の育成枠からスタート。前年度年俸2億円(プラス出来高)のスター選手に提示されたのはわずか400万円。通算300本以上のホームランを放ってきた中村だが「野球がやれるだけで幸せ」と集中力を発揮、シーズン打率・293という結果を残した。ポストシーズンでも腰痛と戦いながら打率4割をマーク、日本シリーズMVPに輝き涙を流した。

 なお、5戦で3勝したチームが優勝というシステムはこの年限りで廃止された。セカンドステージは「リーグ優勝チームにアドバンテージ1勝」が与えられ、その上で4勝したチームを優勝としている。

初出:がっつり!プロ野球21号

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