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【空手女子形 米国代表・國米櫻独占インタビュー】祖国で改めて実感した、スポーツが持つ5つのチカラ

東京オリンピックとパラリンピックでは、日本人選手のメダルラッシュもさりながら、様々な形でクローズアップされているのは大会を支えたボランティアや関係者の姿であり、やはり日本だからこそ大会を開催できたという海外選手たちの感謝の声である。ハワイで生まれ、空手女子形の部でアメリカ代表として入賞を果たした國米櫻選手は祖国で何を感じ、スポーツの未来にいかなる可能性を見出したのだろうか。

空手という競技が持つチカラ

――スポーツには感動や喜びを伝えるチカラがあります。またそれぞれの種目ならではのおもしろさや魅力、価値も備えています。数ある競技の中でも、空手という競技が持つ最大の特徴や価値、空手が持つチカラというものはいかなるものだとお考えですか?

空手は東京オリンピックで正式種目に採用されたスポーツですが、その根幹は武道なんですね。東京オリンピックでご覧になったかもしれませんが、選手はやはり礼に始まって礼に終わるというの大切にしています。選手同士のリスペクトもとても強いので、お互いをまず尊重しながら、試合に出ているんですね。そういう部分は他の種目と結構大きく違うところなのかなと個人的には思います。

私は空手の中でも「形(かた)」専門なんですが、この種目は自分を表現できるアートの一つだと捉えてきました。もちろん試合をしている間は、ニコニコしている私の姿を他の方がご覧になることはないんですが、力強い演武を通しても、柔らかな要素を表現できたりする。武道の中でも特に空手の形は、人それぞれのいろんな感性や気持ちを、本当に一目見るだけで感じられる種目だと思うんですね。これも他のスポーツと比べて、全然違うところではないかなと思います。

――海外には、空手を通して日本の文化や伝統に触れるようになったと仰る方も多い。國米選手自身、空手というスポーツが、祖国である日本の文化や伝統をグローバルに伝えていくための有意なツールになっていると感じられますか?

ええ、もちろん。私は日本でも海外でも空手をしてきましたが、たとえば海外の選手の中には、まず日本の文化に興味を持って空手を始めたという人もいれば、逆に空手を始めたことによって、日本の文化に親しみや関心を持つようになった人もいるんですね。

こういうふうに、空手はいろんな方向から日本に触れる機会を提供しているし、空手がきっかけで日本に実際に来る人たちも多い。日本の文化や伝統と交流する機会を作っていくという意味でも、空手は理想的な競技だと思います。

スポーツを通じた社会貢献のチカラ

――今、「交流」という単語が出てきましたが、國米選手は空手を通じて日本でもアメリカでも、多くの方々や地域コミュニティと交流されてきました。特に近年はパナソニックとタッグを組み、日米両国において非常に意欲的に社会貢献活動、地域貢献活動をされている。このような活動はやはりパナソニックという企業が持つチカラを反映したもの、パナソニックだからこそ実現し得たものなのでしょうか。

そう思いますね。あのコロナ禍の中でも、テクノロジーを使って子供たちと交流できるというのは、私に本当に大きなやりがいと喜びを与えてくれました。

やっぱりコロナ禍では、誰もが非常に苦労していたと思うんですね。私たちのような選手は、どこで練習するか、あるいはどうやって練習すればいいのかということを考える程度でよかったんですが、世の中でははるかに大きな苦労をされている方や、命を落としている方もたくさんいらっしゃった。

そういう状況の中で、オンラインで多くの人たちと交流する。直接会わなくても子供たちが空手の練習をできるようにして、お互いを助け合ったり励まし合ったりしながら、一日一日が楽しみになり、また次の日を迎えることができるようしていく。

こういうふうにみんなでつながりながら、世界を少しでもよくしていくのに貢献したいという想いは、パナソニックさんも強く持っている。そういうパートナーさんと出会えて、一緒に社会活動に携わることができたのは、すごく幸せだったと思います。

実際、私は日本やアメリカの子供たちとやりとりしたり、大会期間も「ソウゾウするちから」というトークセッションに参加したりしていました。私はTeam Panasonicの一員として世界各国のアスリートと定期的にセッションをしていますが、オリンピックの間もオンラインで交流していたんです。

――私もオンラインでのトークセッションや、子供たちと和気藹々を話される様子などを拝見しましたが、國米選手が空手をやっていてよかった、パナソニックとパートナーを組んでよかったなと、改めて実感されているような印象を受けました。

パナソニックさんのおかげで、空手を通じて多くの人たちと交流できるようになりましたから。そういうプラットフォームを設けていただいたのは、本当にありがたいです。私は空手を7歳の頃からずっとしてきましたが、昔は自分がオリンピックの舞台に立つ場面なんて想像していなかったんですね。

でもパナソニックさんとパートナーシップを組むことによって、自分も空手を続けながら、よりたくさんの人に空手というスポーツを知ってもらったり、子供たちと触れ合うことができた。またロサンゼルスのリトル東京にあるテラサキ武道館というコミュニティセンター起点に、空手を通じて地域の人たちといろんな形で交流する場を設けていただいたんですね。

これは選手として何よりうれしいですし、今まで空手を続けてきてよかった、頑張ってよかったなと心から思えました。パナソニックさんとの様々な社会貢献活動は一時的なものではなく、これからの将来にもつながっていくと思います。

オリンピックやパラリンピックが持つチカラ

東京オリンピックでの試合には、ロサンゼルスからも声援が送られた。写真提供=パナソニック

――そのような努力が実り、今回のオリンピックでは見事にアメリカ代表の座を勝ち取られ、祖国の日本で開催された大会で入賞を果たされました。これからはパラリンピックも開幕しますが、やはり祖国の日本で開催されたオリンピックに参加するというのは、感慨も一入だったのではないでしょうか。

東京オリンピックで空手が正式種目になることが発表されてから、ずっとこの日に向けていろんな努力をしたり、環境をいろいろ変えながら準備してきたので、武道館で試合をした時は、ちょっと言葉にできないぐらい感動が湧き上がりましたね。

やはり自分一人の力では、絶対にあの場には立てなかった。日本では大学の先輩や先生、指導者の方々にお世話になりましたし、アメリカでも多くのサポートをしていただいた。そしてもちろんパナソニックさんと出会ったからこそ、ここまで来ることができました。大会期間中は日本のボランティアスタッフの方たちとも交流できたので、すばらしい経験になりましたね。

日本の社会と日本の人々が持つチカラ

――今回の東京オリンピックやパラリンピックは、コロナ禍の大変な状況の中、ボランティアスタッフの方たちがなんとか大会を成功させようと一生懸命に支えています。実際、海外の選手の中には大会を通して、日本や日本の人たちが持つ暖かさや良さに触れることができたと仰っている人も多い。その点についてはいかがですか?

まったく同感ですね。空港に着いてからバスに乗って選手村に移動するところから、練習会場、試合会場、あらゆるところでボランティアの人たちはおもてなしの気持ちを忘れずに、私たちのような選手やスタッフの人たちを一生懸命に迎えてサポートしてくださった。その後、選手村にいながら試合会場に通うようになっても、日本の人たちの優しさと努力がいたるところで感じられましたね。

私は日本でずっと生活していたので、なるべくスタッフの方やボランティアの方たちと話して交流するようにしましたが、海外の選手たちも、コロナ禍の中でオリンピックを成功させることができたのは、日本だったからこそだと言っています。私自身、日本の皆さんに改めて、心からお礼を言いたいですね。

未来への「夢」と「目標」が持つチカラ

大会期間中もオンラインイベントでアスリートや子供たちと触れ合ってきた國米選手(右上)。写真提供=パナソニック

――國米選手はオリンピック出場し入賞を果たすという、一つの大きな目標を達成されました。今後はどのような活動をされていく予定ですか?

オリンピックまでの数週間は自分の練習でいっぱいいっぱいだったので、カリフォルニアに戻ったら、早く子供たちに会いたいなとずっと思っていました。私は今までもずっと空手の指導をするのが大好きでしたし、子供たちとの交流もたくさんしてきていたので、また子供たちと一緒に空手の練習をしていきたいと思っています。

――國米選手にとっては空手の道を究めていくことと同様に、子供たちと触れ合っていくことも、大きなモチベーションになっていると。

アメリカでも空手をしている人はたくさんいますが、みんな空手を学んでいるだけではないんですね。たとえば道場で学んだことは、学校のような外の世界で使える。子供たちはそうことも学んでいるんです。私自身、空手を教えるという言い方をしますが、実際には空手以上のものを道場で教えられるように工夫してきましたから。

そういう意味では、空手を通じて社会貢献をしていく、空手を通じて現地の人たちと交流をもっと深めて、そして空手を知る人たちをもっと増やし、このすばらしいスポーツをもっと広めていければいいなと思っています。

――ある意味、空手という武道やスポーツに対して恩返しができますね。

ええ、それは空手家としての目標ですね。たしかに空手ではトレーニングの仕方とか、試合への臨み方といったスキルを学んでいくんですが、それが全てではありません。むしろ空手では目標を設定して、それに向けて努力をして、メンタル的にも自分を鍛えていく方法を学んでいけるんです。

こういう要素は空手以外でも使えるスキルなので、スポーツ選手としても空手家としても、そして國米櫻という一人の人間としても、もっといろんな人と交流しながら空手を通じて、社会貢献していけたらいいなと思っています。

◇國米 櫻(こくまい・さくら)
1993年アメリカ・ハワイ生まれの日系アメリカ人。日本人の両親のもと7歳から空手を始め、14歳で全米大会優勝。本格的に空手を勉強するため日本の高校に進学。岡山学芸館高校、同志社大学、早稲田大学大学院の後、2016年に単身渡米。東京オリンピックで正式種目化された空手「型」(二人の競技者が勝敗を競う「組手」と違い、演武の美しさを競う種目)でアメリカ代表として出場。普段はロサンゼルスを拠点に活動しながら、パナソニック「Team Panasonic」の一員としてアンバサダーも務める。

初出=「HALF TIMEマガジン」8月25日掲載
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