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【女子サッカー】アメリカでは女子代表選手の給与・報酬体系が男子と同じになった理由を考える!≪現役なでしこリーガー/樫本芹菜≫

Text:樫本芹菜(スフィーダ世田谷FC)

今年5月、サッカーアメリカ女子代表が男子代表チームと同じ給与・報酬体系を勝ち取ったニュースが日本でも取り上げられました。2019シーズンのアメリカ女子代表の平均観客数は25,122人と、男子代表の23,306人を上回る数字を出しており、これまでの功績を認められての結果かと思います。

 

今回は、アメリカ女子サッカーの文脈の一つである、ロールモデルとしての選手たちのアイコン化について触れていきたいと思います。

 

冒頭で触れたアメリカ女子代表でのニュースと並び、スペイン女子代表も続く6月に同等の条件を勝ち取ったりと、海外では女子サッカー界での明るいニュースが続いています。

そういった地域では、選手たちが憧れの女性としてのロールモデルとしてアイコンとなり、その影響力を利用して社会的ムーブメントを起こしており、アメリカはその代表だと思っています。

 

自国開催となった1999年ワールド杯は、アメリカ女子サッカーの歴史の中でも一大イベントとなり、決勝では90,150人も動員しました。

当時のスーパースターであるミア・ハムを筆頭に、スポブラ姿で喜ぶ姿が象徴的となったブランディ・チャステイン、当時すでに2人のこどもの母であったジョイ・フォーセットなどが名を連ね、”The ‘99ers”として、ESPNがドキュメンタリー化もしています。

 

この大会では「サッカー少女とその母親」をマーケティング対象として大きく方向を変え、選手たちを強く美しい女性のアイコンとして発信をしていきました。

その在り方は当時からブレず、むしろ自己表現における多様化が進んだことで、ロールモデルとしての幅が広がり、より根強い女子サッカー人気に繋がっているように感じています。

 

アメリカの選手たちの話を聞いていると、「自分たちがロールモデルとして…」というようなフレーズをよく口にしています。そしてこれはプロチームに限らず、少なくとも私が経験した大学レベルから既にそうでした。

アメリカでは大学スポーツでも、NCAAアスリートとして、特に地域のこどもたちにとっては憧れの的となっています。そんな自分達の立場や役割をよく理解し、特にピッチ上での振る舞いは同年代ながらもかっこいいと感じさせられ、そんなチームメイトたちを誇りに思っていました。

 

そんな選手たちからさらに振るいにかけられた人たちがプロとなり、代表に選出され、あれだけバイタリティに溢れた個々の集まりができるのも納得です。

そしてその強い影響力を持って社会に問いかける。観客動員でみるとリーグトップの人気を誇る、Angel City FCはその最たる例であり、サッカーに限らず、他競技や芸能界で活躍する女性たちが投資してできたクラブです。

クラブ立ち上げのリリースをみたとき、いよいよ女子サッカーが世の中における女性エンパワーメントの役割を果たし始めているのだなと、とても興奮したのを覚えています。

 

もちろん私たちアスリートにとってはピッチで輝くことが一番ではありますが、私がアメリカやヨーロッパで出会ってきた選手たちは、その輝きを利用してより良い社会をつくろうと、さらにその先を見据えていました。

スポーツ社会学では政治的利用を避けられないスポーツの一面などにも触れますが、逆を返せば、スポーツには本来それだけ大きな力を宿しているということでもあります。

夢や感動だけでは大きくは変わらないかもしれませんが、スポーツやアスリートがここまで大きな存在となれば、それはもう立派な文化と言えるのではないでしょうか。

樫本芹菜noteはコチラ