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愛甲猛がタカの目を目指して取り組んだ利き目ではない右目の鍛錬方法とは!?

Text:鈴木長月

意外と知られていないけど、実はみんな意識している!?プロ野球選手の利き目って?!

その成否にも実は多大な影響を及ぼす選手の〝利き目〟。OBが明かすプロ野球での実態とは!?

愛甲猛が取り組んだ利き目ではない右目の鍛錬

あらかじめ断っておくが、ここからの話は、あくまで愛甲氏の経験に基づくある種の〝仮説〟。だが、さすが3割を打った一流選手とあって、その言は真に迫っている。

「これは人体の仕組みを考えればわかることだと思うけど、筋肉は脳からの信号がなきゃ正常に動かないし、そのとき脳から送られる信号は、こと打撃に関しては、ほぼほぼ視覚に依存してる。だとしたら、おおもとの視覚情報を処理する能力は、絶対高いに越したことはないじゃない?俺はやらないからよく知らないけど、パソコンのCPUとかって、要はそういうことでしょ?(笑)」

なるほど。ボールの見える、見えないだけでなく、利き目が脳への情報伝達にも影響しているとなれば、話はさらに奥深い。もはやこれを機会に、脳科学領域の専門家にでも詳しく聞いてみたいほどだ。

「逆に、反射神経だけで打ってる場合は、情報が脳を経由していないから利き目の影響は受けていない。よく本塁打直後の選手が『どうやって打ったか覚えてません』みたいなコメントをすることがあるけど、あれって正しくは〝見えてない〟だからね(笑)。プロともなれば、それまでの蓄積と予測で、ある程度までなら打つこともできる。でも、それだけだと『当たるとデカい』で終わるのがオチ。本当なら、教える側の指導法だって、右打ち・左打ちと同じように、利き目によっても変わってこなきゃおかしいんだよ」

ちなみに、現役当時の愛甲氏は利き目ではない右目の鍛錬はもとより、眼球自体の可動域やフォーカス速度にもいち早く着目。トレーニングメニューに自ら加えていたという。「当時いたコンディショニングコーチの立花(龍司)から、眼球の可動域は25歳ぐらいから衰え始めるっていうのを聞いて、すでにとっくに30代ではあったけど、マジメにやったよ。

具体的には、乱数表みたいなデッカい紙を壁に貼って、そこに書かれた任意の数字を、手元に持ったカードサイズの縮小版から見つけていく。同僚の(フリオ・)フランコもよく言ってたしね。『タカの目を持て』って。鳥のタカって、ものすごく広い視野から、瞬時に獲物にフォーカスするじゃない? ボールを打つ動作もそれと同じ。若い頃に、監督の山内(一弘)さんから『スイングの瞬間に(ヘッドに書かれたメーカーの)マークが見えなきゃダメだ』って教えられたときは、さっぱりワケがわからなかったけど、今ならそれもわかるよね(笑)」

ずいぶんと話が複雑になってきてしまったが、つまりは視覚の能力と打撃は密接に連動するということ。そしてその〝入口〟にあって、重要な役割を果たしているのが利き目だということだ。

出典:『がっつり! プロ野球(28)』

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