SPORTS COLUMN
- スポーツの話題を毎日更新 -

迷走五輪の原点。1年延期のなぜ【二宮清純コラム スポーツの嵐】

Text:二宮清純

森喜朗前会長の本音は「2年延期」だった

 今さら言っても詮無いことだが、東京五輪・パラリンピックの延期が1年ではなく2年だったら、新型コロナウイルスに対するワクチンも間に合っていたのではないか。

 周知のように2020年東京大会は、昨年3月24日、IOCと日本側の電話会議により、1年延期に決まった。

 電話会議の出席者は安倍晋三首相(当時)、小池百合子都知事、森喜朗大会組織委員会会長(当時)、橋本聖子五輪担当大臣(当時)、IOCトーマス・バッハ会長の5人。

 実は森前会長の本音は「2年延期」だった。それが、なぜ1年になったのか。

 以下は『中央公論』(2020年6月号)に掲載されたインタビューから引く。

<森 私には他の皆さんが来る30分前に、安倍さんから一人で来てくれ、と。私と総理だけで事前に打ち合わせをしました。中止はとにかくなしで1年延期の線でいこうと。

二宮 その中で、森さんは2年でどうですか、と投げかけたけれども、安倍さんが1年で勝負に出た。こういう解釈でよろしいですか。

森 総理が1年延期と言ったから、「コロナが終息しないこともありうる。2年は考えなくていいんですか」と尋ねたら総理は「2年だったらやれないだろう」と。「政局も絡むよ」「それは考えないでおこうよ」。私と彼の間柄だから、そういう会話は確かにあった。>

 インタビュー記事では割愛したが、安倍前首相は「1年たてばワクチンもできる。日本の技術は捨てたものではない」とも語ったという。

 結局、日本製のワクチンは1年たってもできず、ファイザーやモデルナ(ともに米国)など外国製ワクチンに頼り切りである。

 五輪の強行開催を懸念する山口香JOC理事と先日、報道番組でご一緒した。彼女の「あと数カ月早く今の勢いでワクチンを打っていたら、今頃随分、五輪を取り巻く環境は変わっていただろう」という言葉が印象的だった。

 ここにきて、だいぶスピードアップしてきたとはいえ、65歳以上の高齢者のワクチン接種率は、まだ1回目が23.70%、2回目が2.83%に過ぎない。

 なぜ五輪開幕から逆算して、あと半年、せめて3カ月早く必要な量のワクチンを確保し、接種に乗り出さなかったのか。

イギリスでは、人口の約4割にあたる2815万人が2回目のワクチン接種を終え、日常を取り戻しつつある。

 果たして五輪の1年延期は正しかったのか。今後、この国が道を誤らないためにも一度、検証しておくべきだろう。(日本のデータは6月7日時点)

初出=週刊漫画ゴラク2021年6月18日発売号