<中国製ワクチンに頼った国は今、感染拡大と闘っている。>米ニューヨークタイムズ(6月22日付)が、そんな記事を掲載していた。
毎日新聞(7月11日付)から引く。<主に中国製を採用したチリやモンゴルなど4カ国は、人口の50~68%が接種を終えたにもかかわらず、感染が拡大し、世界で最も感染状況が悪化している10カ国に含まれると指摘した。>
中国製(シノファームとシノバック)の2つのワクチンは不活化ウイルスを使用したもので、米ファイザーや米モデルナの「mRNAワクチン」に比べ、有効性が低いという結果が既に出ている。
インドネシアでは6月から7月上旬にかけて、131人の医療関係者が新型コロナウイルスに感染し、命を落としているが、その大部分がシノバックを接種していたことが明らかになった。
さらに言えば急拡大するインド由来のデルタ株への有効性は未知数でブースターショット(別のワクチンの追加接種)を促している国もある。
中国外務省は6月、既に80カ国以上に約3億5000万回分のワクチンを配布したと発表した。ワクチンを外交の武器として展開し、一定の成果を上げたとの見方もあるが、変異株に置き換わった今、退場は時間の問題か。
あの時、もしIOCの提案を日本側が受諾していたら、東京五輪・パラリンピックを前に、事態はもっと混迷を深めていただろう。
IOCトーマス・バッハ会長が中国五輪委員会(COC)から、東京五輪・パラリンピックと、来年2月に開幕する北京五輪・パラリンピック出場者に向け、中国製ワクチン提供の申し出があったことを明らかにしたのは今年3月のことだ。
バッハ会長は言った。
「COCから親切な申し出があった。真の五輪連帯精神に基づく申し出に感謝する」
この頃、日本側は「ワクチンを前提としなくても、安心安全な大会を開催できるように準備を進めている」(菅義偉首相)とワクチンの普及を五輪開催可否の条件にからめないことに躍起だった。五輪開幕までにワクチンの普及は困難だと諦めていたからだ。
IOCがファイザーとドイツのビオンテックとの間で選手へのワクチン提供に関する覚書を交わすのは5月に入ってからだ。
とはいえ、既に中国製ワクチンを接種している選手は各国にまたがる。IOCは「五輪選手の85%は接種ずみ」と胸を張るが、その中身が気になる。
初出=週刊漫画ゴラク2021年7月23日発売号