SPORTS COLUMN
- スポーツの話題を毎日更新 -

春キャンプ名物 “柵越え”の虚実【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

94年の大物助っ人ロブ・ディア―

 プロ野球の春季キャンプがコロナ下でスタートした。

 春季キャンプ名物に“柵越え”がある。フリー打撃でのホームラン数だ。

 新外国人や大物ルーキーが“柵越え”を連発するたびにスポーツメディアは大騒ぎだ。昨年は阪神のドラ1ルーキー佐藤輝明の話題で持ち切りだった。

 初日、佐藤はいきなり135メートル弾を含む9本の“柵越え”を放ち、大物の片鱗をのぞかせた。

 結局、佐藤は球団の新人最多記録を更新する24本塁打をマークしたのだから、“怪物”との評価に間違いはなかったわけだ。

 キャンプでの“柵越え”と言えば忘れられないのが、日米通算507本塁打を記録した松井秀喜だ。ドラフト1位で入団した松井は、プロ入り初のキャンプで150メートル級のホームランを連発し、周囲を驚かせた。

 そのほとんどがライトへの打球で、文字どおり“しばき上げる”といったイメージだった。まだ変化球にはついていけないところがあったが、その荒々しさが逆にポテンシャルの高さを裏付けていた。

 その一方で、“大外れ”だった選手もいる。オールドファンには懐かしい名前だろう。

 1994年、阪神にロブ・ディアーというメジャーリーガーがやってきた。メジャー通算226本塁打の大砲で、ブルワーズ時代の86年には33本、タイガース時代の92年には32本のホームランを記録していた。

 この舶来の大砲を阪神は年俸2億7000万円で迎え入れた。当時としては破格の好待遇だった。

 成績を調べると、気になる点もあった。穴が多く、メジャーでは87年、88年、91年、そして来日前の93年と4度も“三振王”になっていたのだ。

 打率も総じて低く、メジャーで2割5分以上をマークしたのは88年の2割5分2厘の一度だけ。スカウティングレポートには「外角低めの変化球についていけない」との記述もあった。

 しかし“恋は盲目”だ。。ある球団幹部は「打率は少々低くても50本は打ってくれるだろう」と期待を寄せた。

 キャンプでのディアーは確かにホンモノだった。連日、場外弾を連発し、キャンプ地の安芸市営球場のレフト後方には特設ネットが張られた。メディアはこれを“ディアーネット”と呼んだ。

 果たしてシーズンの成績は――。右手親指の故障もあり、公式戦での“柵越え”は、わずか8本。その姿は、さながら“大型扇風機”だった。

(初出=週刊漫画ゴラク2022年2月4日発売号)

芝山ゴルフ倶楽部 視察プレーのご案内