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カタールの光と闇。W杯の持続可能性【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

11月20日に開幕

 サッカーW杯カタール大会開幕まで、残り3カ月。中東でのW杯開催は史上初、アジアでは02年日韓大会以来、2回目だ。

 これまでW杯は欧州の主要リーグのシーズンが終了するのを待ち、6月から7月にかけて開催されるのが常だったが、40度を超える真夏の猛暑を避けるため、異例の冬開催(11月20日から12月18日)に決まった。

 W杯で使用される8つのスタジアムには、全て冷風を送り込む冷却システムが導入されている。カタールの12月の平均最高気温は23度、平均最低気温は16度と、冬は夏に比べるとはるかにしのぎやすい。にもかかわらず冷却システムを導入したのは、通年での使用を見越しているからだ。

 米ブルームバーグはW杯の経済効果を170億ドル(2兆2915億円)と見積もる。これは同国のGDP(2019年)の約9・4%。

 とりわけ建設業と観光業には追い風が吹く。同国ではスタジアム、ホテル建設に加え、空港整備や道路拡張などのインフラ整備が進む。大会期間中、政府は120万人の観光客を見込んでいる。

 カタールはアラビア半島東部、ペルシャ湾に突き出した面積11427km²、人口約288万人の半島国。日本にたとえるなら、面積は秋田県とほぼ同等、人口は広島県より、ちょっと多いくらいだ。

 これだけ小さな国が単独でW杯を開催した例は、過去にはない。天然ガスや原油に代表される豊富な化石燃料が国を潤し、W杯招致の原動力となった。ちなみにカタールのひとり当たりのGDPは約1100万円で世界5位、日本の約2倍だ。

 とはいえ、天然資源には限りがある。余力があるうちにインフラを整備し、観光立国への道筋を付けたい、というのが政府の狙いだろう。大会組織委が謳う「持続可能性」とは、読み替えれば同国の「持続可能な経済発展」ということ。その布石がW杯開催だ。

 ひずみも見えている。この1月、英紙デイリーメールはスタジアムの建設現場で6500人以上の外国人移民労働者が命を落としたと報じ、世界中から非難が集中した。

 カタールでは約180万人の労働者が都市建設作業に従事しているが、そのほとんどがアフリカやアジアからやってきた外国人だ。彼らは使い捨てなのか。

 W杯の光と闇。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、スタジアム建設などで外国人労働者が深刻な人権侵害を受けたとして、FIFAに4億4000万ドル(約563億円)の賠償を求めている。

※上部の写真はイメージです。
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