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井上尚弥は有資格。国民栄誉賞の条件【二宮清純 スポーツの嵐】

Text:二宮清純

全てのベルトを各団体の王者からKOで奪取

 アジア人初のボクシング世界4団体統一王者(バンタム級)となった井上尚弥は、記録の面でも記憶の面でもモンスターである。

 実は4団体統一王者は、井上を含めて9人いるが、全てのベルトを各団体の王者からKOで奪ったのは彼ひとりなのだ。

 2018年5月25日 ジェイミー・マクドネル(英国)1回TKO WBA

 19年5月18日 エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)2回KO IBF

 22年6月7日 ノニト・ドネア(フィリピン)2回TKO WBC

 22年12月13日 ポール・バトラー(英国)11回KO WBO

 4つのベルトをひとつひとつ集め、約4年半かけて、全てを揃えてみせた。

 不思議なのは、これだけの実績を築きながら「国民栄誉賞」の声がかからないことだ。

 誤解なきよう申し上げるが、私は政治とスポーツは一線を画すべきだと考えている。これまで政府が国民栄誉賞を政権浮揚に利用してきた例がいくつか報告されているが、決して好ましいことではない。

 そこへ行くと、イチローは立派だ。2001年、04年、19年と3度も授与を打診されながら「野球人生を終え切った段階でいただけるように頑張りたい」「人生の幕を下ろした時にいただけるように励みます」と、その都度理由をつけて上手に断っている。

 受ける、断るは、その選手の自由である。もらいたい人はもらえばいいし、断りたい人は断ればいい。ただ、それだけの話だ。

 問題は、井上が表彰規程に定められている「顕著な業績」を残したにもかかわらず、素通りされてしまっていることだ。もっとも、この「顕著な業績」という定義も、あやふやと言えばあやふやで明確なモノサシはない。

 だが、そうだとしてもバンタム級4団体統一に加え、3階級(ライトフライ、スーパーフライ、バンタム)制覇を既になしとげている井上の「業績」が「顕著」なものと認められないのなら、同賞を授与されるプロボクサーは永遠に現れないだろう。

 かつて同賞に近付いたボクサーが、ひとりだけいる。WBA世界ライトフライ級王座防衛13度の具志堅用高だ。

 候補に上がりながら立ち消えとなった背景に、「ボクシングに対するアレルギーがあった」(ジム関係者)というのだ。興行の不健全性を指摘されたとも聞いた。同賞の創設から46年、令和の時代に適した授与んも条件を考えるべきだろう。

※上部の写真はイメージです。
初出=週刊漫画ゴラク2023年1月13日発売号

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