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開幕直後から12戦連続0封の投球で藤川球児の後釜として阪神の守護神に!呉昇桓

Text:橋本雅生

助っ人外国人列伝/阪神投手編

日本球界を彩ってきた助っ人外国人選手たち。「ラブすぽ」が独自に選んだ投打の名選手各5名と、印象深い選手を投打から各1名紹介する。

開幕直後から12戦連続0封と安定感抜群の投球披露した!呉昇桓

【投手5位】呉昇桓

〈NPB通算データベース〉
・勝利 4勝
・敗戦 7敗
・セーブ 80
・防御率 2.25

淡々と試合を締める韓国の豪腕

投手編の第5位は日米韓を股にかけ、「石仏」と呼ばれるほどの冷静沈着で安定したクローザーぶりを現在まで披露している呉昇桓(オ・スンファン)。

投手として高校のころから注目されたスンファンは、大学時代に肘を壊してトミー・ジョン手術を受け、ほとんど実績がなかった。それでも将来性を買われ、2005年に韓国のサムスン・ライオンズに入団する。初年度からクローザーを務め、10勝、11ホールド、16セーブを記録し、韓国シリーズでは3セーブを挙げてMVP&新人王を獲得。

ルーキーとは思えない活躍ぶりを見せたスンファンは、翌年からさらに飛躍する。2006年は韓国球界で歴代最多の47セーブを記録し、WBCで投げれば2次リーグで日本打線をねじ伏せる。以降も史上最少試合で通算100セーブ、3年連続30セーブなど韓国球界の歴代記録を次々に更新した。

プロ入り後、すぐに韓国を代表するクローザーになったスンファンは、常に淡々と冷静に試合を締める大物ぶりを発揮し、チームメイトで後にヤクルトの守護神として大活躍する林昌勇(イム・チャンヨン)の存在がかすんで見えたという。

こうして9年間で277セーブを記録したスンファンは、FA権を行使して鳴り物入りで阪神に入団する。

打てるようで打てない「石直球」

当時、阪神は藤川球児のメジャー移籍に伴い、新たな守護神を必要としていた。藤川といえばNPBの歴史に名を残すクローザーだが、結果としてスンファンは後釜という難しい役割を充分に果たした。

2014年は「石直球」の異名を持ったストレートで並みいる日本人打者を抑え込み、開幕直後から12試合連続無失点、10イニング連続被安打0など安定感抜群の投球を披露。奪三振が多いクローザーではないが、痛打を浴びない実力をいきなり発揮する。

そして、レギュラーシーズンの半分近い64試合に登板し、39セーブ、防御率1.74の成績で絶対的な守護神の座を確立した。このシーズンは最多セーブのタイトルを獲得するとともに、クライマックスシリーズではリードした試合のすべてに登板し、チームを日本シリーズに導く立役者となっている。

さて、スンファンの代名詞といえるストレートは、平均150キロ強、日本での最速は154キロ。ストレート以外はカットボールに近いスライダーを織り交ぜ、ほかの変化球はほとんど使用しない。

スピードだけでいうとほかにも速い投手は多く、身長は178センチなのでストレートに角度もあるわけでもないが、プロの打者でも打ち崩せない。その理由はボールの回転率にあった。

スンファンはリリースの瞬間に親指を支点に押し出てバックスピンを利かせているため、ほかの投手よりも回転率が格段に高い。プロ投手の平均は41回転、ボールがホップするような「火の玉ストレート」を投げる藤川で45回転といわれる。そしてスンファンの回転率は47回転と藤川を上回るスピンで投げているのだ。

回転数が多いほど初速と終速の差が小さく、いわゆる伸びのあるストレートとなり、打者が感じる体感速度は速くなる。さらに84キロという強力な握力が相乗効果となり、石のように重いストレートを生み出していた。単調な投球に見えても打てない理由はそこにあったのである。

韓国、日本、そしてアメリカへ

33歳の年齢で選手として油の乗りきった時期の2015年もスンファンは序盤から順調にセーブを重ねた。オールスターにも出場し、昨年を上回る41セーブで2年連続のセーブ王に輝いている。

火消し役として非の打ち所がない大車輪のパフォーマンスを見せればチームとしては契約を継続したかったはず。だが、スンファンの違法賭博疑惑が発覚したことで阪神は契約を打ち切り、2016年からはブルージェイズやカージナルスなどでプレーすることになった。

世界最高峰の舞台でもスンファンは躍動し、4年間で16勝、42ホールド、41セーブとその力を見せつけている。

2020年からは古巣・サムソンに復帰。ストレートの球威は140キロ台に落ちたが、以前よりも変化球を多くした制球力、そしてこれまでに培った経験と貫禄はさすがの一言。2021年は韓国球界で6度目となる最多セーブのタイトルを獲得するなど、マウンドに立てば圧倒的な存在感を見せている。さらに2023年6月には、日米韓通算500セーブの金字塔を打ち立てた。

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