パリ五輪、金メダル第一号! 女子柔道、角田夏実選手の登場に、会場は大興奮!
アスリートをゲストに迎え、リアルにこだわったトークでアスリートの魅力に迫る『ラブすぽ』。これまで野球関係のゲストをメインにお呼びすることが多かったのですが、今年はオリンピックに沸いた年。オリンピック後、CM、モデル、メディア出演と、見ない日がないほど大忙しの柔道家・角田夏実さんがラブすぽ初登場! 北は北海道、南は九州大分から参加の方や、実際にパリまで日本柔道を応援に行かれたという方など、超満員のファン約200名が詰めかけました。男女比は大体8:2ぐらいでやはり男性ファンが多かったですが、なかには高校生やお子さんなど若い女性ファンの方もいたりと、その人気ぶりはまさに老若男女の国民的スター。今回は約8割強の方が『ラブすぽ』初参加でした。
普段は『ラブすぽ』スタッフとして受付や前説を担当している下村泰司ですが、一応本職はフリーのアナウンサー。今回はMCという大役を務めさせていただきました。大役が決まってから毎日緊張の日々を過ごしていましたが、角田さん出演のYouTubeなどを拝見すると、角田さんご自身、常に何事においても準備というものを大切にされているということでしたので、私もほぼ全部のYouTube、試合やインタビュー、メディア出演時の動画などを見て準備万全で臨ませていただきました。
「こんな近距離に角田さんが!」シャッター音鳴りっぱなし
19時ちょうどにイベントスタート。『ラブすぽ』は基本写真撮影OK、動画撮影NGとなっていますが、まずゲスト登場の際は写真撮影ではなく拍手でお迎えするのが通例。200人の盛大な拍手の中、角田さんが少し緊張した面持ちで登場。今やメディアに引っ張りだこの毎日で撮影には慣れているかと思いきや、実は五輪後、メディアやイベント出演は多数あったもののファンの前でのがっつりトークショーというのは無かったそうで、畳の上で見せる表情とは少し違うスタートとなりました。
そんな角田さん、やはりオリンピックから帰国後、人生が激変したそうです。反響の大きさには未だ慣れていないということですが連日いろんな場所に呼ばれ、これまでなかなか会う機会が無かった方にお会いすることも増えたそうです。なかでもつい先日、ご自身が小学生の頃から憧れていたというKinKi Kidsの堂本光一さんの舞台を見に行った後に楽屋で挨拶する機会をいただいたそうで、その時に憧れの方から「試合テレビで見て応援してました」って言われてメチャクチャ嬉しかったそうです。
そんな冒頭のトークの後は、こちらもワンショットでの撮影タイムスタート。
この撮影タイムは記者会見さながら、ファンの皆さんが自分の方に向いて欲しい一心から「角田選手!」「なっちゃん!」と名前を呼んでみたり「金メダル見せてください!」「こっちに目線お願いします!」などの掛け声が。お客さんもここで声を出して何とか目線を貰おうと必死でした。でもお客さんが声を出してくれると、ステージ上のテンションも上がってきますね。やっぱり金メダルを首から下げた角田選手の立ち姿は、メチャクチャかっこよかったです。そしてその後は『ラブすぽ』恒例のファンの皆さんの前や横を練り歩いての撮影タイム。『ラブスポ』は基本的に先着順で前から座席指定となっていきますが、最前列の方も最後列の方も金額は一緒ということもあり、後ろの方にも同じように楽しんでいただけるよう練り歩くのです。たっぷりと時間をかけて皆さんに金メダルをかけた角田さんをお近くで撮影してもらい、ようやくステージでのトークがタートとなりました。
パリ五輪でのあの試合に感じた「ZONE」!
今回、私が角田選手とトークしたかったのは大きく3つ。パリ五輪の話、柔道家・角田夏実のこと、あとはプライベートなお話。
まずはパリ五輪の話から伺いました。記憶に新しいところですが、柔道競技はパリ五輪で開会式の翌日という期間中でも最初の方に行われました。また角田さんが出場する48kg級は最軽量ということもあり、「日本に最初の金メダルをもたらすのは角田選手では?」と、期待されて臨んだ大舞台でした。
角田さん、遅咲きと言われるとおり、実は今回が初めてのオリンピック出場。これまで世界選手権3連覇、柔道グランドスラムで5度の優勝と、すでに実力は世界一。“王者”として臨む初めてのオリンピックとなったパリ大会でしたので、先に五輪出場の経験者から話を伺ったそうです。「世界選手権よりもオリンピックは楽しいよー」と言ってくれた先輩もいたそうですが、角田さん自身、オリンピックは全くの別物だと捉えていて、五輪出場が内定してから本戦までの一年間は悪夢ばかり見てうなされていたそうです。毎朝起きた時に残る疲労感は練習よりもきつい日もあったそうでそのプレッシャーは相当なものだったそうです。
そしてまず最初の関門となったフランス代表の選手との試合。地元パリでの開催、柔道が人気スポーツということもあり、五輪前は歓声が大きくてコーチの声も聞こえない可能性もあるので、何かの際は、指示は声ではなくハンドサインや合図を決めておこうと話していたそうです。ですが、この試合で角田さんは不思議な体験をされたそうです。試合前まで聞こえていた歓声が畳の上に上がった瞬間に全く聞こえなくなり、自分と相手、お互いのコーチ、そして審判の5人だけの声だけが鮮明に聞こえる不思議な状況だったそうです。これまでも大切な試合や集中力が究極に高まった時などに相手の技がスローモーションに見えたり、相手のウィークポイントがピンポイントで見えたりするなど少し不思議な感じに見舞われたことはあったそうですが、大勢の観客の前でありながら自分と相手の2人しか存在しないというような感覚は初めての経験だったそうです。
試合も相手の手の内がすべて事前に研究した想定通りで、最後まで落ち着いて試合を行っていたそうですが、実はここでも不思議な体験が。この試合、巴投げで一本勝ちを収めた角田選手ですが、この巴投げの瞬間は記憶がまったく無くて投げ終えてから審判が一本と手を挙げた瞬間に「あ、一本なんだ、ラッキー」ってなったそうです。
本来、畳の上では喜ぶことはしないという角田選手ですが、この時ばかりは顔がにやけそうになったので、それを抑えることに必死だったという後日談も披露していただきました。
試合後周囲に「なんか静かな試合でしたね」と話すと、「何言ってるの? めちゃくちゃ歓声の上がる試合だったよ」と返されるほど。角田さんが今思い返してみると「これがいわゆる“ZONE”というものだったのかな?」と振り返っていました。
その後、順当に決勝まで駒を進めた角田選手。最後、決勝戦ではモンゴルの選手との一戦ではポイントも順調に奪って試合を優位に進めていましたが「最後、残り3秒での逆転劇などもあった」と、過去のオリンピックの怖さなんかも冷静に認識しながら試合を運んだそうです。そして優勝の瞬間、パリ五輪での日本人金メダル第一号、そして夏季オリンピックでの通算500個目、さらに柔道女子48kg級では2004年の田村亮子さん以来の金メダル。初出場のオリンピックでの金メダル獲得が記録づくめとなりました。
ご両親から「畳の上では喜びや感情を表現しない」という教えをここでもしっかりと守り、ほぼ表情を崩すことはありませんでしたが、畳を後にした際に今井コーチが号泣しながら自分のところにやって来て、熱い抱擁をした瞬間に初めて金メダルを実感したそうです。そんな常に冷静に見える角田選手ですが、さすがに表彰式では大号泣。表彰台の一番高いところで君が代を聞きながら「諦めないで本当に良かった、逃げ出さないで本当に良かった」と、苦しい時に出会うべくして出会った人たちの顔が浮かんできて、涙を止めることができなかったと言っていました。
ちなみに皆さんも気になったかもしれませんが、オリンピックで左右のこめかみ付近に丸いパッチを貼って試合に臨んでいたので、そのことを聞いてみました。あれは接骨院を営むお父様がよく施術で使用するものだそうで、通常は筋肉や患部に貼るそうですが、こめかみに貼ると頭の回転が良くなると思って貼っているそうです。過去に貼り忘れて試合に出た際、調子が上がらないことがあって、それ以降は欠かさずに貼っているそうで、今ではおまじないみたいなものになっているとのこと。さすがにテレビ出演時に貼って出たことはないそうですが、今度クイズ番組に出演することがあれば「貼って出ようかな」と言っていたので、皆さんぜひご注目ください(笑)。
柔道人生の転機は、不純な理由で決めた大学進学?
柔道を始めたのは小学校2年生の時。柔道家だったお父様の影響で、地元警察署のちびっこ柔道クラブに参加したことが角田さんの柔道人生の始まりだったそうです。最初のうちは純粋に畳の上で飛んだり跳ねたりするのが楽しかったそうですが、試合となると小学生の大会は男女別や体重別ではなく学年でひとくくりにされてしまうため、体の大きい子や男子には勝てなかったそうで、段々と好きだった柔道が楽しくなくなっていったそうです。ただご両親との話し合いで「黒帯(初段)を取るまではがんばってみる」と中学でも柔道を続けました。でも中学になると今度は男女別、体重別で階級が分かれることになって、そこで勝てるようになり柔道が楽しくなったそうです。もしかしたらこのへんを見越してのご両親のアドバイスだったのかも知れませんね。高校は県内有数の柔道の強豪校に進みインター杯では3位になるなど全国的に頭角を現してきた角田さんですが、大学進学時の話を赤裸々に語ってくださいました。
「私、大学進学は動機が不純なんです」といきなり語り出した角田さん。どうやら高校時代で柔道がお腹いっぱいになったということで、いよいよ柔道は高校までで、一段落して花の女子大生を目指していたそうですが、ここで厳しいご両親が立ちはだかります。いわゆる目的のない大学進学であるのなら学費は出しませんと。この時、後の進学先となる東京学芸大学が「運動部を強化したい。ついては柔道部の推薦枠が一枠あるので来ないか?」とお声がかかったそうです。
学校の成績もよく内申点も基準をクリア。
さらにその枠の条件として全国大会3位以上の成績。
高校の全国大会上位者は柔道の強豪大学に進学する人がほとんどで、学芸大を目指すライバルはいない。
大学の柔道部からは今年推薦枠を使って柔道部に入部者を出さないと来年以降柔道部の推薦枠が削られてしまうので、柔道部からはお願いされる優位的な立場。
国立大で親からの受けも悪くない。
「それじゃ私、学芸大に進んで柔道やります」ってなったそうです(笑)。ただ入部すると部員数も少なく、それこそ高校時代全国大会には縁が無かった選手と仲間になり、でもそれがまた柔道に対して新しい考えが芽生えたそうです。このチームで強豪大学と互角以上に戦って勝つためにどうすればいいかを物凄く考えるようになり、柔道がより好きになっていったそうです。単にやらされる練習ではなく、研究や分析を自発的にする「考える柔道」が身についた貴重な4年間になったそうで、今では角田選手の真骨頂ともいえる「柔術」もこの時に礎が築かれたそうです。
2ショット撮影時に、今井優子コーチとのトークショースタート!
そして始まった2ショット撮影。お客さんがひとりずつステージ上で、角田さんと念願の2ショット撮影するなか、せっかくですので今井優子コーチに話を聞いちゃいました。
角田さんが高校生の頃に、まだ現役だった今井コーチは国体の千葉県代表のチームで初めて角田さんと出会ったそうです。当時は年齢差もあり挨拶を交わす程度だったそうですが、角田さんが大学生になった時に県代表選手の強化合宿で再会し、そこで初めて深くコミュニケーションを取ったそうです。その時の印象は「可愛がってあげたくなる妹気質」で放っておけなかったそうです。角田選手の魅力について伺うと、まずはなんといっても「分析力」とのこと。相手のことももちろんそうですが、自分のことをよく理解しようとしていて、自分の強み、弱み、性格などを理解することで、練習内容や強化ポイントなどが明確になるそうです。今井コーチは「身近でサポートしていたにすぎなかった」と控えめに自分のことを話していました。
また最近のメディア出演の多さや人気を、どう見ているか聞いてみると「近くて遠い存在になってしまい、少し寂しい気もするし、もっともっと活躍の場を広げていって欲しい思いもあるし、複雑な気持ちもある」と本音を語ってくれました。
お待ちかねの質問コーナー
ここからは今井コーチにもステージに上がっていただき、いよいよ皆さんからの質問コーナー。「混合団体戦、3勝3敗のタイで勝負はいよいよルーレットによって代表選手を決めるとなったときは、どんな心境だったのか」「柔道のルールが一部変更となる可能性があるが、角田さんにとっては有利なのか、不利なのか?」。さらには、期末試験真っ只中の女子高生から「今日も期末試験だったけど、赤点を免れたか自信がない。角田さんは高校の頃どのような勉強法で試験に臨んでいたか」という質問が寄せられました。これに対して角田さんからは「ひたすら暗記」と一発回答。
その他に会社員の方からは「時間をとても大切にしているという角田さんに、タイムコントロールをどうされているのか」という質問が及ぶと、「基本は前日に翌日のスケジュールをすべて決める」とのこと。起きる時間やシャワーの時間、電車の時刻、歩くスピード、などをあらかじめ考えておくそうです。そのために携帯のアラーム機能が役に立つそうで、今井コーチからも「夏実のスマホ、よくアラームが鳴ります」と(一同爆笑)。角田さんいわく、「前日準備したスケジュール通りに過ごせたときの、夜ご飯は美味しい」とのことです。
「もしタイムマシンがあったとして、同じ48kg級の田村亮子さんと時空を超えて戦った場合、どのような戦術で戦いますか?」とう質問には、驚きの解答が! 実は角田さん、田村亮子さんの試合は研究していて「自分だったらどう戦うか」をシミュレーションしていたそうです。凄すぎます! 「まずは相手の動きが素早いので距離を取る。そしてチャンスを狙って、おそらく筋力は自分の方があると思うので腕力で抑えに行くと思います」ですって。金メダリスト同士の妄想試合で、会場はおおいに盛り上がりました。
その他にもたくさんの質問がありましたが、ご自身の経験から導き出した答えを真摯に話してくださいました。会場のファンの方も、驚いたり笑ったりと大満足の時間だったと思います。ここで時刻は21時ちょうど。最後恒例の集合写真を撮っていよいよお開きとなりました。
最後に角田さんから、今日の御礼とパリ五輪での応援に対する御礼、そして「次なる目標はまだ明確にはなっていませんが、いろんなことで活躍できるよう頑張っていきます」と力強い言葉をいただいて、無事にイベントは終了となりました。
この年末年始、すでに告知されているものや、まだ情報解禁前の予定も含めて、まだまだたくさんメディア出演の予定もあるみたいです。大好きな柔道を多くの方に知ってもらいたい一心で、メディア出演を続ける一方で、練習も再開したとのこと。来年2025年は、また大好きな柔道で更なる輝きを放つ角田夏実さんを一緒に応援していきましょう! 年末のお忙しいところ、多くの方にご参加いただきありがとうございました!
写真・天野憲仁