SPORTS COLUMN
- スポーツの話題を毎日更新 -

千葉ロッテ、佐々木朗希が生まれ育った岩手の港町とは?

Text:菊地高弘

19年ドラフト。4球団の競合指名の末、ロッテが交渉権を獲得した佐々木朗希(大船渡)。
岩手の沿岸部に生まれ育った怪物は、どんな景色を見てきたのか。かつては花巻東の菊池雄星、大谷翔平と岩手の怪物を追い、19年は佐々木朗希を追いかけたライターがその足跡を辿った。

■佐々木朗希〝怪物が見る景色″①岩手の港町で見た景色

「さよ~なら~!」
ランドセルを背負った見知らぬ女児にふい に声をかけられ、悪いことは何もしていない のにうろたえてしまった。
その後も、すれ違う下校中の小学生が次から次へと「さようなら」と挨拶してくる。この地域では、たとえ知らない大人であっても小学生が挨拶する文化があるのか……と思っ ていると、腰を丸めて歩く老婆も穏やかな笑みをたたえて「こんにちは」と会釈してくれた。
彼らに挨拶を返しながら、胸にほんのりと広がる温かみを感じつつ、内心こう想像せずにはいられなかった。
佐々木朗希もかつてはランドセルを背負って、道行く人に『さようなら』と挨拶していたのだろうか?」

私は盛駅から10分ほどの岩手県道9号大船渡綾里三陸線を歩いていた。右手にカーブす る小路の前で、大船渡高校の案内板が見えた。
案内板の右を見ると、10 メートルほどの高台 に木々が並び、フェンスには創立70周年を祝う横断幕が下がっている。
時刻は16時を過ぎ たばかりで、校庭と思われる方角からは生徒の声は聞こえない。

正門の前で私は立ち止まり、すぐに踵を返した。大船渡高校の校舎内にメディアが立ち入らないよう、学校から要請が出ているため だ。
大船渡高校は基本的に校舎内での取材に応じておらず、私は高台にある野球部グラウンドを見ることすら叶わなかった。

それでもスマートフォンを取り出し、グーグルマップの衛星写真をたよりに野球場の場所の下までたどり着くと、誰もいない高台のフェンスを見上げた。
「ここで佐々木は3年間を過ごしたのか」と思うだけで、不思議な感慨があった。
佐々木は大船渡高校から徒歩圏内で、小学生から現在までの時間を過ごしている。私に挨拶してくれた小学生は、佐々木が8年前から通った猪川小の生徒たち。
猪川小からさらに20 分弱も川沿いを歩けば、佐々木の通った大船渡一中に着く。

なだらかな稜線を描く今出山のほか、周囲に小高い山がそびえる以外に視界を遮る高い ものがないため、「紳士服のコナカ」の赤く巨大な看板がやけに存在感を放っている。
聞こえる音といえば、車の走行音の合間に鳥のさえずりが響くくらい。平凡で日本中のどこにでもありそうな風景。それは佐々木が今まで日常的に見てきた世界だった。

次回、佐々木朗希〝怪物が見る景色″② 「岩手に逸材が出現する理由」に続く

(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

執筆:菊地高弘
1982年生まれ。『野球太郎』編集部員を経て、フリーライターに。選手視点からの取材を得意とする。近著に『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)がある。

【書誌情報】
『野球太郎』刊行:イマジニア株式会社 ナックルボールスタジアム

野球の見方が変わる!日本で最もディープなプロアマを網羅する野球誌


伝説の野球誌『野球小憎』の創刊スタッフたちが2012年秋から場を変えて、『野球太郎』を刊行。
ドラフト候補選手に関する情報量は野球誌No.1の実績。全国各地の野球ライターや、ネットで評価の高いアマチュア野球研究家たちが誌面で大活躍中です。
他では読めないユニークな企画が満載。圧倒的な情報量と内容を満喫してください。