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飛距離を出すにはツアープロを真似てはいけないのか!?【「圧力系」インパクトの作り方/阿河徹】

Text:阿河徹

ツアープロをまねるとスイングは崩壊する

アマチュアゴルファーが、最高のパフォーマンスを発揮できるスイングのインパクトはどのようなものでしょうか。それはたとえば林の中から低い球で脱出するときのようなインパクトです。

私は「長いランニングアプローチ」と表現するのですが、7番アイアンで100ヤード転がすときのショットをイメージしてみてください。強いインパクトを作る必要がありますから、小さなバックスイングからパチン! と打って終わり、というようなスイングになるんじゃないですか。非常にシンプルかつコンパクトなスイングですが、あれこそアマチュアゴルファーが目指すべきインパクトだと思うのです。

「そんなスイングじゃ飛ばないよ」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。ボールとクラブの双方が硬いので、コンパクトなバックスイングでもそこそこ大きな反発力が生まれますし、この打ち方は身体を揺さぶるようにして大きなアークを作るよりも実は飛ぶんですね。ここを理解してしまうとゴルフはぐっと簡単になります。

テークバックしたらすっとコッキングして、コンパクトなトップからパチーン! と叩く。このイメージでボールが打てれば十分距離は出ますしあまり曲がりません。いつもドライバーでフェアウェイをとらえ、アイアンでグリーンセンターに乗せて2パットのパー。そんなプレーを続けることが可能なのです。実際にはそういうアマチュアゴルファーは極めて少ないのが現状ですが、なぜこの方向に進まないのかというと、ふだん触れているゴルフの情報のほとんどが、ツアープロからの発信というのも大きな理由です。

300ヤード飛ばさないと商売にならないプロの世界では、両腕を伸ばしたままテークバックして、前傾姿勢をキープしたまま打ち抜くようなスイングが必要で「ゴルフのコツは?」と聞かれれば、当然自分のやり方を答えるわけです。しかしそれらは常日頃から筋肉トレーニングをしていたり、柔軟性を高める訓練をしているからこそ可能な動きであることも多く、鵜呑みにしてしまうとおかしなことになります。たとえば背中がガッチガチに硬いお年寄りが、両腕の三角形を崩さないテークバックをした時点でスイングは崩壊します。あれは肩甲骨が柔軟で別々に動くことを前提としたうえでのコツですから、そうではない人がやると、首の付け根が左右に動きまくって、もはやゴルフスイングの体をなさなくなってしまうのです。

スイングに対する認識がズレているのも大きな理由で「コンパクトなバックスイングからタメを作ってパチンと当てるスイングと、身体を大きく揺さぶるようにしながら大きなアークを描いて打つスイングでは、どちらがヘッドスピードが速いでしょうか?」と質問を出すと、ほとんどのアマチュアゴルファーは「大きなアークのほう」と答えます。ダイナミックに動くし、助走距離もしっかりとれている、さらには体重移動も行っているということでそう思うんですね。

しかし正解は前者。なぜかというと、後者はタメによる角速度がないからです。いくらスイングアークが大きくても、グリップ側とヘッド側の速度差がないスイングはヘッドが走らないんですね。練習場に行くと、ダイナミック系のスイングにトライしているアマチュアゴルファーを大勢見かけますが、スイングのダイナミックさに対して弾道はショボいものです。

そもそもアマチュアゴルファーに、ハードな訓練が伴うスイングが必要かと言われれば、もちろんノーです。実際、まったく練習しないトップアマは多く、にもかかわらず彼らは、遊びのゴルフでは簡単にアンダーパーで回ってきますし、競技ではパープレーでの争いができるのです。これがどういうことかというと、一度覚えてしまえば練習が要らないスイングがあるということです。

●スイングアークを大きくはアマチュアゴルファーに向いていないスイング



全長が6500ヤードとか、自分のポテンシャルの範疇で戦うぶんには練習をしなくても戦えるんですよ。しかしプロゴルファーは、全長が7000ヤードを遥かに超える距離のコースで結果を出さなくてはなりませんから、当てるだけのインパクトでは通用しませんし、筋力が必要なスイングを身に付けるしかありません。だからこそ、プロゴルファーになってからもスイングを改良していくし、トレーニングも重ねるんです。普通のアマチュアゴルファーにはそんな時間はありませんので、やはり一度覚えたらそんなに練習しなくてもいいスイングを覚えたほうがいいに決まっていますよね。

 プロゴルファーが追求するスイングを「スピード系」とするなら、アマチュアゴルファーにおススメのスイングは「圧力系」と表現できます。筋力でスピードを出すのではなく、タメを使ってボールに圧力をかけるスイングですね。また手の感覚はあったほうがいいと思います。もちろんスピード系のスイングを目指すなら手や腕の感覚はないほうがいいのですが、圧力系のスイングは手や腕でタメを作ったほうが現実的です。

極端な例かもしれませんが、私の古い生徒さんに85歳になる方がいて、その人は70代が中心のゴルフ仲間の中でも一番の飛ばし屋で「バケモノ」と呼ばれているそうです。はっきり言って身体はガチガチで、背中に亀の甲こう羅らを背負っているような状態のその人が、最年長にもかかわらず一番飛ぶのはハンドワークが上手だからです。

程度の差こそありますが、デスクワークが多いサラリーマンも背中は同じようにガチガチで、そんな人たちがボディモーションを主眼にスイングを作っていくと、何度も言いますが身体が左右にズレまくってしまうんです。

ですから目指すべきなのは、体重移動を過度に行わず、アドレスの段階で左体重にしておいて腕と手首の運動だけでポン! と打つようなインパクトです。手打ちではないのですが、手と腕の感覚はけっこうシャープなスイングと言っていいでしょう。この方向に行くことで、時間のないアマチュアゴルファーでも比較的楽に70台を出せるようになると思います。

【書誌情報】
『70台は楽に出る!「圧力系」インパクトの作り方』
著者:阿河徹

ボールがクラブフェースにきちんと当たる確率を高め、飛距離が十分出る― そんなスイングを実現するため著者ススメているのが「圧力系インパクト」。小さなバックスイングで強いインパクトを実現する。本書では、このインパクトの作り方を写真を数多く用いて解説。70台のスコアも可能にする、ゴルファー待望の一冊だ。

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